「所期奉公」の理念はどこへ? 苦悩の選択を検証する
三菱商事が8月27日、千葉県沖と秋田県沖の3海域で進めていた洋上風力発電事業から撤退すると発表した。新聞では「無責任」「見通しが甘い」と集中砲火を浴びたが、投資家からは「よく決断した」と評価され、三菱商事の株価は撤退発表から2週間で6%ほど値上がりしている。三菱商事連合がこの事業を落札したのが2021年。そこから4年で世界経済は大きく様変わりした。
「まだ信じられない気持ちだ。3海域すべてからの撤退は日本の洋上風力導入に遅れをもたらす。非常に遺憾だ」
撤退が発表された27日、武藤容治経済産業相は報告に来た三菱商事の中西勝也社長に厳しい言葉を投げつけた。
経産省はこの2月に2040年度を目途とした「第7次エネルギー基本計画」をまとめたばかりだ。この計画で同省は「洋上風力」を再生可能エネルギー拡大の「切り札」と位置付けた。わずか半年でその「旗艦プロジェクト」を担うはずの三菱商事連合が白旗を上げたのだから、まさに出鼻を挫かれた格好だ。
基本計画は、現在(2023年度)の9854億kWアワーの発電電力量が2040年に1兆1000億~1兆2000億kWアワーになることを前提に、現在15.2%のエネルギー自給率を30~40%に高めるとしている。
さらに2013年度比の温室効果ガス削減割合を2040年に73%(23年度は22.9%)にするため、再エネの比率を現在の22.9%から40~50%に高める。再エネの内訳では現在の9.8%が23~29%に増える太陽光の比率が最も高いが、1.1%から4~8%に増える「風力」の中でも特に「洋上風力」を「切り札」と位置付けた。
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