警察庁では2026年1月、経済安全保障を巡る横浜市の精密機械メーカー「大川原化工機」の冤罪事件で謝罪会見を開いた迫田裕治警視総監(平成3年、警察庁入庁)が退任し、後任に森元良幸官房長(同)が充てられる見通しとなった。

2025年1月に就任した楠芳伸長官(元年)の後任に事実上決まっている太刀川浩一次長(3年)と、長官・総監の“両横綱ポスト”を平成3年入庁組3人で分け合う異例の展開だが、警察OBからは「『同期で仲良く』といったような穏当な人事とは少し趣が異なるようだ」との声が漏れている。
3年入庁組では早くから警備警察(警備実施・公安捜査)のスペシャリストである迫田氏とゼネラリストの太刀川氏が嘱望されてきた。迫田氏は警視庁公安部で部長のほか参事官や外事3課長を務め、警察庁警備局でも局長のほか外事情報部長や外事課長、外事課不正輸出対策官を歴任。一方、太刀川氏は警視庁刑事部で部長のほか捜査2課長、警察庁交通局では局長や交通企画課長、交通規制課長を歴任。さらに同長官官房で官房長と首席監察官の要職も務めた。
「長官レースでは迫田と太刀川が当初から本命視されていた。迫田はとにかく外事部門のエキスパート。太刀川は器用なタイプで、組対(組織犯罪対策)の分野でも手腕を振るっていた。マスコミ対応もそつなくこなし、桜田門(警視庁)の2課長時代の番記者とはかなり懇意にしていたようだ」(同前)
かつては戦後の左翼活動の隆盛と対峙した警備警察が、警察内部でエリート中のエリートとされてきた。そのため現場のノンキャリアの成績上位10%は警備警察の担当に選抜され、キャリア官僚の出世コースも警備畑が王道とされていた。だが社会の多様化が進み、刑事事件の高度化・巧妙化に伴い刑事畑の発言力や発信力が強まり、警察組織もガバナンス(管理体制)の強化が求められる中で調整型のオールラウンダーも存在感を増している。
ある警察関係者は「警備局長と刑事局長は出世の登竜門ポストと言われていますが、坂口正芳さんは専門性が求められる局長ポストを経ないで官房長(旧警務局長)となり、次長、長官へと駆け上がりました」と指摘。
その上で「途中までは迫田さんが長官コースの本命で太刀川さんは対抗とみられていましたが、逆転しました。背景には、内閣法制局第2部に出向して参事官として5年間汗を流すという“ご奉公”のバトンを太刀川さんが露木さんから引き継いだことで、露木さんに買われたためという噂もあります」と話す。
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