2023年にNetflixで公開されたアニメ『悪魔くん』が、2026年1月から地上波放送されている。このアニメには、原作者の水木しげるが通った「中華料理八幡(東京都調布市)」をモデルとする店舗が登場。在りし日の“国民的漫画家”の思い出を「八幡」の料理長・鈴木利夫氏が語った。
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「中華料理八幡(はちまん)」は東京都調布市で、1965年からのれんを掲げてきました。私がこの店で創業者の親方の下、働きはじめたのは、76年、28歳の時でした。親方は私を一人前に育ててくれただけでなく、88年に私を2代目店主にしてくれました。
この「八幡」の近所には、国民的漫画家の水木しげる先生の仕事場がありました。自転車で町を颯爽と走り去る水木先生を出前の途中によく見かけました。町内の子どもたちは、水木先生にサインをせがもうと一生懸命に追いかけていました。「今日は駅前の本屋にいたぞ」「さっき野川のほとりを歩いていたよ」などと水木先生の目撃情報を子どもが噂していたものです。
水木先生は「八幡」のお得意様でした。入口に近いテーブル席が水木先生の定位置。出前の注文もよくいただきました。
水木先生のお気に入りは、五目そば。タンメンの上に色々な具材をトッピングした一品です。チャーシュー、ゆで卵、海老、蒲鉾、カニカマ、きくらげ、にんじん、キャベツ、もやしなどたくさんの具材を載せているので、栄養バランスがよくて、ボリューム満点。これを水木先生はいつもぺろりと平らげていました。スープまで飽きずに味わっていただけるように様々な工夫を凝らしていましたから、完食していただけるのは、すごくうれしかった。
でもある時、水木先生の注文が五目そばからラーメンに変わりました。「食が細くなったのかな」と水木先生の衰えを感じて、一抹の寂しさを味わいました。それから数年後、水木先生は2015年に鬼籍に入られました。

