水木ファンの“聖地”に

 その後も私は店を続けていたのですが、2024年に脊柱管狭窄症が悪化し、手術を受けるために、いったん店を閉めざるを得ませんでした。術後もリハビリが必要で、2025年の春には、杖を使えばようやく歩けるまでに回復したのですが、背骨に3カ所もボルトが入っているので、落ちたものを拾うのも困難で、長時間の立ち仕事はつらい。店の再開は正直なところ難しいと思っていました。

「中華料理八幡」で水木しげるがよく注文していた五目そば ©文藝春秋

 そんな私の気持ちが変わったのは、休業中に水木ファンが「八幡」を訪れては閉まっているのを見て、残念そうに帰っていったことを聞いたからです。「八幡」は水木先生いきつけのお店であるだけでなく、水木作品にそれらしき店が出てくるので、水木ファンにとっては、“聖地”になっていることを知りました。何でも鬼太郎が猫娘にラーメン2杯を奢った店は調布の神社のそばにある中華そば屋だから、これは「八幡」ではないかとファンの方は言います。また、2020年に放送された『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメに出てくる鬼太郎とねずみ男がラーメンを食べる店も「八幡」によく似ていると教えられました。そういえば、水木先生の『悪魔くん』が2023年にアニメ化された折には、「八幡」をモデルにした町中華を登場させたいと言われて、スタッフから取材を受けました。

 そのようなことが重なり、次第に「お世話になった水木先生とファンの方々を裏切りたくない」という思いが募っていきました。そこで後進の従業員に厨房を任せるとともに、店長を先代の息子さんに代わってもらい、私が店に立つ時間を減らすかたちで2025年6月に店を再開しました。

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この続きでは、“美味しい五目そば”のスープの秘密が語られています〉

※本記事の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年2月号に掲載されています(鈴木利夫「水木センセイが好きだった五目そば」)。

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出典元

文藝春秋

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