アニメ MAPPAは創作とライツの両立を目指す

首相肝いり「重点17分野投資」にモノ申す

大塚 学 MAPPA代表取締役社長
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『チェンソーマン』などヒット作を連発

 昨年9月に公開された劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、お陰様で国内興行収入100億円を突破しました。2011年にMAPPAの立ち上げに関わって以来、70以上の作品を手がけてきましたが、その一つひとつは、アニメスタジオとして何ができるのかを模索する時間でもありました。今回の結果は、そうした積み重ねの延長線上にあるものだと感じています。

 今春には、社員数が500人を超える予定で、そのうち50人以上が「ライツ事業」に携わっています。ライツ事業とは、作品やキャラクターの権利を管理し、配信や商品化などを通じて、その価値を社会に広げていく仕事です。この領域の強化は、スタジオが安定して作品を創り続けるための土台づくりでもあります。もちろん、アニメスタジオの本分は良い作品を制作することにあります。ただ、作品数を増やすだけでは経営は成り立ちません。制作と権利運用の両方を整えていくことが、これからのスタジオには必要だと考えています。

 経済産業省によると、アニメやゲームを中心とする日本発のコンテンツの海外売上は半導体や鉄鋼の輸出額を上回り、今や自動車に次ぐ存在になった。海外市場規模は約6兆円で、政府は2033年までにこれを20兆円にまで拡大する目標を掲げた。その旭日昇天の勢いの業界にあってにわかに存在感を増しているのが、「アニメーションスタジオMAPPA」だ。創業15年ながら、『呪術廻戦』『「進撃の巨人」The Final Season』などのビッグタイトルを次々に手がけ、藤本タツキ氏の人気マンガが原作の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は、昨年12月30日時点で国内興行収入が100億円を突破。世界でも100を超える国と地域で公開され、北米では公開初週にナンバーワンを獲得。国外の興行収入は約295億円に達している。

 これまでのアニメスタジオは下請けという立ち位置で、作品制作のみを担当するのが一般的だった。アニメーターを含むスタジオスタッフは多忙な中、期日までに納品し、「労多くして益少なし」といったイメージもあった。だが、MAPPAは配信やグッズ制作などのライツビジネスの分野に活動の幅を広げることによって、アニメスタジオのイメージを一新し、大きな収益を上げることに成功している。そのMAPPAで指揮を執るのが、2016年から代表取締役社長を務める大塚学氏(43)だ。

始まりは『坂道のアポロン』

 私は「STUDIO4℃」という劇場アニメが中心のアニメスタジオに在籍していました。とても好きなスタジオでしたが、アニメ制作者としてテレビアニメの分野も経験してみたいという思いがあり、2011年にMAPPAの立ち上げに関わることになりました。

大塚学氏 Ⓒ文藝春秋

 MAPPAは大手スタジオのマッドハウスを退社した丸山正雄さん(映画『PERFECT BLUE』『サマーウォーズ』『この世界の片隅に』などを手掛けたプロデューサー)が作った会社です。

 彼がMAPPAで実現したいと考えていた企画はいくつかありましたが、その一つがフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」で『坂道のアポロン』(2012年)を制作するというものでした。その制作に参加することになり、これがMAPPAで仕事を始めるきっかけになりました。

『坂道のアポロン』は小玉ユキさんのマンガが原作で、1960年代の長崎・佐世保を舞台にジャズに魅せられた高校生たちの青春を描いた作品です。

『坂道のアポロン』 Ⓒ小玉ユキ・小学館/「坂道のアポロン」製作委員会

 当時の私は、アニメビジネスにおけるスタジオの立ち位置を考える余裕などありませんでした。初めてのテレビシリーズ制作に必死に向き合い、失敗も多い中、周囲に支えられながら何とか完成まで辿り着いた、というのが正直なところです。ただ、この経験を通して、テレビシリーズを作ることの難しさや、その一端をようやく学び始めたのだと思います。

『坂道のアポロン』が終わった後、予定されていた仕事がいずれも実現せず、さらに同作の制作赤字も重なってMAPPAは早くも厳しい経営状況に直面しました。その時に初めて、スタジオが潰れないためには何をすべきなのかを真剣に考えるようになりました。ただ作品を創るだけでは会社は続かない。その現実を、身をもって知ることになったのです。

ゲーム会社との大きな差

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source : 文藝春秋 2026年4月号

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