「六星占術」ブームを巻き起こし、2000年代中盤にはテレビに次々登場して、「視聴率の女王」と呼ばれた細木数子(1938~2021)。2006年、『週刊現代』誌上で、溝口敦氏が彼女の半生に迫ると、細木は版元を相手取り、6億円余の損害賠償を求める裁判を起こした。
溝口氏
連載評伝「細木数子 魔女の履歴書」では、青線地帯での生い立ちに始まり、暴力団幹部との内縁関係、島倉千代子を利用した数億円の荒稼ぎ、陽明学者・安岡正篤との“婚姻関係”について書いた。すると細木さんは、広域暴力団最高幹部に連載中止の工作を依頼。私がきっぱり断ると、裁判を仕掛けてきた。
訴状の被告欄には、私の名前はなかったが、講談社に6億円余の大損害を与えれば、ライター稼業は続けられない。それで補助参加の形で裁判に加わったのだが、結局2008年、細木さんが訴訟を取り下げた。実質的にこちらの勝訴といえる。裁判が俄然有利に進んだのは、細木さんの自叙伝『女の履歴書——幸せを呼ぶ占術 愛・富・美への飛翔』の存在があったからだ。
細木数子
本の腰巻にはこう記されている。
〈驚くべき事実、真相——そして著者の多感な少女期から、今日までの全貌が、今、はじめて明かされる!〉
そうなのだ。この本には、私が取材をしようとしていた数々の疑惑についてのヒントが満載だった。
「序」にはこう書かれている。
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source : 文藝春秋 2022年1月号