良質な犯罪ドキュメンタリーを一本生み出すことは、際限なく時間と精神を削り続ける、出口の見えない泥仕事だ。凄絶な現実を、いかにして高い純度のコンテンツへと昇華させ、我々に突きつけるか――。制作側はバランスの見極めを求められる。

 一方で、地上波から毒が消えた現代では、もっと生々しく、もっと残酷な「本物の人間」を求める声が高まっている。この需要と供給のアンバランスを、圧倒的な資本力と執念で埋めているのが今のNetflixである。ドキュメンタリーに目の肥えた読者すら納得させる、世界の深淵に肉薄した5作品を厳選した。

『猫イジメに断固 NO!:虐待動画の犯人を追え』

『猫イジメに断固 NO!:虐待動画の犯人を追え』 ©Netflix

 始まりは、ある男が投稿した目を覆いたくなるような動物虐待動画だった。本作の主役は、画面の向こう側で憤り、立ち上がった世界中の素人探偵たちだ。彼らはわずか数秒の映像から、部屋のコンセントの形状や窓外の景色を解析し、犯人の居場所を執念深く特定していく。その執念はもはや狂気と言ってもいい。

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 だが、犯人ルカ・マグノッタはさらに注目を集めようと、より恐ろしい惨劇へとエスカレートしていく。猫から人へ。アイスピックによる殺害の模様を録画しインターネットに投稿、さらには遺体を切断し、その一部をカナダの政党本部に送りつけるという常軌を逸した凶行に及んだ。レンズ越しに世界を挑発し続けた男と、キーボードを武器に応戦した市民の「共依存」ともいえる記録は、既存メディアが立ち入れない領域まで徹底的に追っている。