『犯罪捜査ファイル: ルーシー・レトビー新生児殺害事件』
舞台は病院の新生児室。空気混入やミルクの大量注入という「静かな手法」で7人の赤ん坊を殺害した看護師ルーシー・レトビー。イギリスの主要メディアが連日「現代医学史上、最も恐ろしい裏切り」と報じた事件だ。
新生児に手をかける残虐さはもちろんだが、本作が突きつけるもう一つの闇は、組織の腐敗だ。現場の医師たちが不審な点に気づき、再三にわたり病院幹部へ報告したにもかかわらず、病院側はブランドイメージを守るためにそれらを黙殺し、あろうことか彼女を擁護し続けた。
家宅捜索では自白とも受け取られるメモが発見されている。しかし、なぜ平凡で善良そうな女性が、最も無垢な存在を標的にしたのか、その動機はいまだ完全には解明されていない。その不気味さが、人間という生き物の計り知れない空洞を露呈させている。
『キープ・スイート:祈りと服従』
末日聖徒イエス・キリスト教会から派生した原理主義団体「FLDS」は、前指導者ルロン・ジェフスの死後、その息子ウォレンによって支配された。自身を絶対的な「預言者」と称した彼は、1万人を超える信者を完全な支配下に置き、強制労働と未成年の性的搾取をシステム化した。
本作が暴き出すのは、信仰を「性的搾取の免罪符」へとすり替えた、凄惨な「一夫多妻制」の実態だ。天国へのチケットとして、父親が自らの娘をジェフスへと差し出す圧倒的男性優位のコミュニティ。女性のあらゆる権利を奪い、行動を制限し、意志が芽生える10代半ばで強制的に結婚・妊娠させることで土地に縛る。コミュニティの結束を強固なものにするために、女性は「通貨」として扱われる。
シリーズ最終話、法廷で再生されるのは、ジェフス自らが記録していた凄まじい犯行の肉声だ。怯える少女に「神の愛」を囁きながら蹂躙するその声が響いた瞬間、「聖域」の欺瞞は跡形もなく崩れ去る。全4話を通じて描かれるのは、一人の男の歪んだ性欲が宗教という衣を纏った時、どれほどの地獄が生まれるのかという残酷な答えなのだ。
「現実の断片」を求めているなら…
結局のところ、私たちがこうした凄惨な事件の記録に惹きつけられてしまうのは、自分たちの立っている場所がいかに危ういものかを、確認せずにはいられないからだろう。
ドキュメンタリーというジャンルにおいて、現在のNetflixは一種の巨大な資料館のようになっている。犯罪心理を解き明かす対談ものから、国家規模の汚職を暴くルポルタージュまで、そのラインナップは驚くほど膨大だ。
もし、フィクションよりも重たい「現実の断片」を求めているなら、Netflixの検索欄にキーワードを放り込んでみるだけで、週末の時間は容易に溶けていくだろう。
