『Tinder詐欺師: 恋愛は大金を生む』

 マッチングアプリを舞台に、ダイヤモンド商の御曹司を装って女性たちから巨額の現金を搾取したサイモン・レヴィエフ。

 彼のヤバさは、単なる結婚詐欺の枠に収まらない。騙し取った金で豪華なプライベートジェットを乗り回し、その姿をSNSで誇示することで、次の標的に信用を植え付ける――この無限のループを構築したシステムにある。いわば、Aさんから奪った金でBさんとキャビアを食し、Bさんから奪った金でCさんと世界を飛び回る。この「恋愛版ポンジ・スキーム」とも呼ぶべき手法に、デジタル時代の虚飾が拍車をかける。

 劇中では、サイモンが女性たちを意のままに操るために恐怖心を植えつけ、クレジットカード詐欺の共犯関係に仕立てていく様子が克明に描かれる。

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 サイモンの悪事はメディアによって大々的に報じられ逮捕に繋がった。しかしたったの5カ月で自由の身となる。すぐに悠々自適で贅沢な生活に戻り、今なお煌びやかな生活がSNSに投稿される一方で、被害者らは今でもローンの支払いに苦しめられている。この胸糞悪い結末を含め、この作品は我々の生きる世界の理不尽さを突きつける。

『ナイト・ストーカー: シリアルキラー捜査録』

『ナイト・ストーカー: シリアルキラー捜査録』 ©Netflix

 1980年代半ば、ロサンゼルス。寝静まった民家に音もなく侵入し、老若男女を問わず、ある時は目玉をくり抜き、ある時は喉を切り裂くという無秩序な犯行を繰り返した悪魔崇拝者のリチャード・ラミレス。本作が秀逸なのは、単なる殺人鬼の記録に留まらず、彼を追った2人の刑事の疲弊と執念、そして当時のL.A.市民が味わった底なしの絶望を克明に描き出している点だ。

 また、公判中の彼にプロポーズやファンレターを送り続けた女性たちの存在は、現代の「推し」文化の対極にある、人間の救いようのない業を突きつける。凶悪な犯罪者に性的魅力を感じる「ハイブリストフィリア(悪党愛好)」と呼ばれる心理。漆黒の髪に彫りの深い貌、そして圧倒的な「悪」のオーラを纏ったラミレスは、皮肉にも一部の女性たちを熱狂させた。作品内では、法廷に詰めかける女性たちの熱烈な眼差しさえも映し出される。