「え、ご遺体を入れ忘れていない?」棺の軽さに気づいた父親の表情は…
――すでにそこまで焼けてしまっている方でも、火葬は必要なのですね。
下駄 水分や肉などは、ある程度残っていますし、何より、火葬は焼骨にするのが目的ですからね。そのためには1000℃に達するくらいの高火力を、何十分も保ち続けて火葬する必要があります。
ただ、人間の体には凹凸がありますから、部位によって焼けやすいところと焼けにくいところがある。全身を同じ状態の焼骨にするために、途中で火の当たる位置を変えたり、温度を調整したりもするんです。
ただ、その時のご遺体は、肉と水分がかなり少なくなっていたので、火葬時間は通常よりかなり短かったですね。
――漫画には「棺がとても軽かった」という描写がありました。
下駄 葬儀場から運ばれて来た時、移動のために私が持ち上げたのですが、「え、ご遺体を入れ忘れていない?」と思うぐらいには軽かったです。そのあと、お父さんが「私にも一緒に持たせてくれませんか」とおっしゃって。ご遺族からのリクエストがあれば、「お力添え」という形で、一緒に棺を持っていただくことがあるんです。
持った瞬間、棺が軽すぎることに気づいたお父さんの表情は、今も忘れられません。おそらくお父さんは、娘さんの亡くなった後の状態を見ていなかった。だから、棺の軽さで娘さんの状態を知ったんじゃないかな、と。私は、あのときの対応がご遺族にとって正解だったか、未だに分からなくて……。
――亡くなった後の姿を、ご遺族が確認しないこともあるのでしょうか?
下駄 もちろん、何かしらの方法で身元確認はされていると思います。ただ、そのときにご遺族がご遺体の状態をじっくり見たとは限らないんですよ。あそこまで損傷が激しいと、ご遺族の負担を考えて、警察や葬儀屋さんができるだけ見せないように配慮することも少なくないので。
――火葬場の職員には、事前にどの程度、死因について伝えられるものなのですか。
下駄 葬儀屋さんの裁量次第ですね。葬儀屋さんはご遺体の搬送やお見送りの準備を一手に担っているので、ご遺体の状態や死因は当然把握しています。一方で、火葬場の職員は、極論を言えば死因を知らなくても火葬はできる。
死因ってそもそも、ものすごくセンシティブな個人情報でもあるので、ほとんど伝えられないケースもあるんです。
