目の前の人がしてほしいと言ったことを、やる。それが私なりの「寄り添う」
――ただ、火葬場職員も知っておいた方がいい、というケースもありそうですよね。
下駄 そうなんです。コンプライアンス的には詳しく言えないけれど、実務的には知っておいた方がいい、というズレはありますね。
例えば同じ70歳の方でも、病死と自死ではお骨上げの雰囲気が全く違います。また、高校生で亡くなった場合でも、小さい頃からずっと闘病してきて亡くなったのか、急な事故で亡くなったのかで、ご遺族にかけるべき言葉や対応が変わってきますから。
だから、「運用上知っておいた方がいい最低限の情報を火葬場に伝える」という葬儀屋さんが多いと思います。「この方は突然の事故で亡くなった方で、ご遺族もまだ気持ちが追いついていないから、お骨上げの時の詳しい説明は省いてね」とか。
――火葬場の職員は、ご遺族と火葬場で初めて顔を合わせるわけですよね。しかも、葬儀屋から最低限の情報しか入ってこない中で、目の前のご遺族への対応を瞬時に判断しなければならない。
下駄 だから、迷うことばかりです。あの時のお父さんにも、「余計に辛い思いをさせてしまったんじゃないか」「あの対応は、不正解だったんじゃないか」と、今でも思うことはあります。
でも、あのお父さんがこの先、「あのとき娘の棺を持てて良かったな」と思うのか、「やっぱりやらなければよかった」と思って人生を終えるのか、それは私には一生わからない。だったら、相手の希望をできるだけ実現するように努めるのが、火葬場職員がすべきことなんじゃないかな、と。
――職員から積極的に何かを提案するのではなくて、あくまでご遺族の希望に寄り添う。
下駄 「こうした方がいいだろう」と予測してこちらから動くのは、「寄り添う」とはちょっと違うと思っていて。それは気遣いなんですよね。気遣いには気配りが必要で、相手が何をしたいか、何をしてほしいかを感じ取る能力がいる。
でも、火葬場で初めて会ったご遺族に対して、限られた情報だけでそこまで察するのは難しい。だったら、目の前の人がやってほしいと言ったことを、やる。それが私なりの「寄り添う」だと思っています。
ご遺族の背景を必要以上に追わない…自分を保つためには
――7年以上火葬場で働き、たくさんの火葬に立ち会ってきた下駄さんですが、今回の出来事はその中でも感情が動いたケースだったそうですね。
下駄 子どもが親よりも先に亡くなってしまう場面に立ち会うと、「どうして」と思ってしまいます。特に自死の場合は……。
子どもがいない私でもそう思うのだから、お子さんがいる職員は、余計に辛いと思います。実際、小さいお子さんの火葬の場合は、「同じくらいの年頃の子がいるから、ご遺族に感情移入しすぎて自分には無理だ」と、辞退する人もいます。
