――感情移入しすぎると、辛い場面もきっと多い仕事ですよね。どうやって気持ちに折り合いをつけているのでしょうか。

下駄 ご遺族の背景を必要以上に追わない、というのが大事かもしれません。背景を知れば知るほど、感情移入してしまうから。だから、葬儀屋さんが「本当に必要なことだけ」しか教えてくれないのも、職員にとってはちょうどいいバランスだったりするんですよ。あまり詳しく言われそうになると「もうやめてよ」と思うこともありましたね。

――最低限の情報共有が、職員のメンタルを守る面でも機能しているのですね。

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下駄 そうなんです。あとは極端な例ですけど、「死体はモノや」って言いながら火葬をする職員さんがいたんですよ。最初は「なんてひどいこと言う人なんだ」と思っていました。でも後になって、その方が、ご自身の奥さんの火葬をしたことがある、と知って。

――そうだったんですか……。

下駄 奥さんを自分で火葬して、それでもこの仕事を続けていくために、ああやって割り切るしかなかったんじゃないかなと。自分を保つための言葉だったんだろうなと、今は思っています。

 

発信することで「聞いていいことなんだ」と思うきっかけになれば

――下駄さんはこれまで漫画やSNS、そして取材を通じて、火葬場のリアルを発信し続けてきました。発信を続ける中で、世の中の反応に変化を感じることはありますか。

下駄 約4年前、一番最初に文春さんに取材してもらったときと比べると、明らかに世間の関心度合いが変わってきていますね。火葬料金の値上げがニュースになったり、火葬に関する小さな記事がネットにちょこちょこ出てきたり。

 私自身も、以前はタレントとして扱われることが多かったのですが、最近は「専門家」「文化人」として取材していただく機会が増えてきています。

 ただ、「関心が高まった」というより、「聞いていいんだな」と思ってもらえるようになってきた、という方が正しいかもしれません。

 火葬場のことって、今までどこか「聞いてはいけない」空気があったと思うんです。でも最近は「聞いていいことなんだ」とみんなが気付き始めている。私の発信が、その変化のきっかけのひとつになれているのなら、嬉しいですね。

撮影=細田忠/文藝春秋

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【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】

▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)
▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)
▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)

INFORMATION

「火葬場を覗く展」開催のお知らせ

火葬場の知られざる現場を紹介する展示イベント「火葬場を覗く展」が、3月21日(土)から29日(日)まで開催される。元火葬場職員・下駄華緒さんによる展示や解説を通して、普段は知ることのできない火葬場の仕事や実態を知ることができる。

【開催概要】
開催日:2026年3月21日(土)〜3月29日(日)
時間:10:00〜18:00(最終入場17:30)
会場:文春ギャラリー紀尾井町
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-23

予約ページ
https://livepocket.jp/e/weahf

公式HP
https://www.kasouba-nozoku.com

ショートCM
https://youtube.com/shorts/nnGHxvjKjRg?si=yLJisalM-EhsN3hA

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