大相撲名古屋場所は、怪我で休場し大関から関脇に陥落して臨んだ安青錦が、今年の初場所以来、3場所ぶり3回目の優勝を果たした。

「文藝春秋」では初場所の優勝後、師匠で元関脇安美錦の安治川親方と安青錦の対談を掲載していた。名古屋場所で復活を果たした今、対談の一部を紹介します。(取材・構成 佐藤祥子)

◆◆◆

ADVERTISEMENT

「これが大関というものか」

 親方 初場所で心配したのは初日くらいだったかな。新大関だし、賜杯返還や優勝額贈呈式など、今までとは違うイレギュラーな行事があったから。初日さえなんとかなればあとは大丈夫だろうなと思っていました。でも初日に審判席から土俵上の安青錦を見たら、光ってるように見えたんですよ。オーラというかね。落ち着いているようにも見えたし、「これが大関というものか」とも思った。後から聞いたら、本人はめちゃめちゃ緊張していて「花道から逃げたかった」と言っていたんだけどね。

安治川親方と大関安青錦 Ⓒ文藝春秋

 安青錦 はい(笑)。特に新大関だからというわけではなく、初日はどの場所でもいつも緊張するんです。だから自分としてはガチガチだったんですけど、帰ったら親方に「今日は全然緊張してなかったじゃん。大関らしかったよ」と言ってもらえた。それで「今場所は行けるんじゃないか」と思えました。

 親方 千秋楽では、優勝決定戦の前にたまたま通路ですれ違ったな。「大丈夫だよ」と一言声を掛けたんだけど、「ああ、これは聞こえてないな」と思った。集中してたんだろうな。

 安青錦 本割を終えて、決定戦のために支度部屋を西から東に移動している時でしたね。声は聞こえてなかったですけど、親方が笑ってる感じだったので、自分も「大丈夫かな」と思えました。土俵に上がる時は毎回そうですけど、今場所は特に親方と一緒に戦ってるという気持ちが強かったです。

大相撲初場所で二場所連続優勝を果たした Ⓒ時事通信社

 親方 弟子たちと15日間一緒に戦うという気持ちは私も同じ。実は初日、たまたま目が覚めたら4時44分で、なんか嫌だなぁと思ってね。二度寝して6時頃に起きたんだけど、「ああ、今日の審判の出番まで時間があるな」と、ひとりで明治神宮に車を走らせたんです。「今場所もみんながケガなく終わりますように」とお参りして。横綱に昇進すれば明治神宮で奉納土俵入りがあるから、気は早いですが「次は安青錦も連れてまた来られますように」ともお願いしました。

安治川親方 Ⓒ文藝春秋

 安青錦 初日の稽古が終わった後、親方が明治神宮のお守りをくれました。いつもより早く部屋を出ていったので、「どこかへ行ってくるのかな?」とは思っていたんですけど。お守りは寝床の上に飾っています。師匠からもらったものはなんでも嬉しいです。

 親方 自分の現役時代の着物も結構あげてるよな。サイズがピッタリだから。