〈あらすじ〉

 1985年、アイルランドの田舎町。ビル・ファーロング(キリアン・マーフィー)は、小さな石炭店を営みながら、妻のアイリーン(アイリーン・ウォルシュ)と5人の娘たちと、質素だが穏やかな暮らしを送っている。

 クリスマスが近づくある日、配達先の修道院で何やら事情ありげな光景を目にしたビル。その後、再び訪れた修道院で働く1人の若い娘(サラ・デブリン)から“ここから助けだしてほしい”と求められたことをきっかけに、修道院長シスター・メアリー(エミリー・ワトソン)と対峙することに。また、建物の中で夜明け前から過酷な労働を強いられている娘たちの姿を目撃する。自身も複雑な環境で幼少期を送ったビルは、彼女たちのことが気になって仕方ない。しかし町で圧倒的な権力を持つ修道院との衝突は家族のためにならないと諭されて……。

〈見どころ〉

 普遍的なテーマを余計な説明を省いて描いた、寡黙な作品。行間や沈黙も味わいのうちだが、原作小説を読んでから観ると理解が深まるかも。

その“事実”を知ってしまったら、見て見ぬふりはできるのか―

アイルランドに実在した「マグダレン洗濯所」の人権問題を背景に、人間社会の闇を静かに力強く描く社会派ドラマ。『オッペンハイマー』(23)でアカデミー賞主演男優賞に輝いたキリアン・マーフィーが、アイルランドを代表する作家C・キーガンによるベストセラー小説に惚れ込み映画化が実現した意欲作。

©2024 ARTISTS EQUITY.  ALL RIGHTS RESERVED. 配給:アンプラグド
  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★☆☆苦手だが記憶に残る映画だ。無表情な権力の気味の悪い浸潤性が、練りの強さを伝える。英雄的言動を極力抑えた描写が、目立った特徴のないアイルランド南東部の風景と噛み合い、観客の脳裡に染み込む。E・ワトソンが怪演。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★★☆石炭商ビルの、帰宅するや汚れた指先を必要以上に洗う姿が繰り返される。惨い光景を見ぬふりをした無情さを際立たせる演出か。だが彼の幸せな幼少期に恐怖が潜む。ビルの決断と温かな微笑みには強い裏付けがあったのだ。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆描写の焦点を絞った一点集中の作り。ミニマリズムの選択と共に映画的愉楽も削ぎ落とされた感はあるが、異彩の体感型だ。閉鎖的なシステムの闇と罪に我々を対峙させる。2002年の映画『マグダレンの祈り』と併せて観たい。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★★☆キリアン・マーフィーとエミリー・ワトソンが出色。人々の心情の陰影を繊細に炙り出す音と映像の深度。ジョニ・ミッチェルも歌った、あのマグダレン洗濯所。時代、国を置き換えても忘れてはならない出来事を刻む逸品。

  • 今月のゲスト
    岡本真帆(歌人)

    ★★★★☆石炭で汚れた手を丁寧に洗う日々の場面が印象に残る。寡黙な主人公の心情を伝えるキリアンの目と表情に引き込まれた。エミリー・ワトソン演じるシスターの静かな圧が、見終えてもなお消えない……。それほど恐ろしい。
     

    おかもとまほ/1989年生まれ、高知県出身。東京と高知の二拠点生活を送りながら、歌人、作家として活躍中。著書に、歌集『水上バス浅草行き』『あかるい花束』、エッセイ集『落雷と祝福』などがある。

  • 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
  • おすすめできます♪★★★★☆
  • 見て損はない。★★★☆☆
  • 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
  • うーん……。★☆☆☆☆
ビルに対して、静かだが抗いがたい強い圧力をかける修道院長を演じたエミリー・ワトソンは、本作で第74回ベルリン国際映画祭助演俳優賞を受賞している。
©2024 ARTISTS EQUITY.  ALL RIGHTS RESERVED. 配給:アンプラグド
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『決断するとき』
監督:ティム・ミーランツ
原作:クレア・キーガン『ほんのささやかなこと』
2024年/アイルランド・ベルギー/原題:Small things Like These/98分
TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
3月20日(金)~
https://unpfilm.com/ketsudan/