母を支える息子と、難病を抱えるシングルマザーの揺るぎない愛を描いた『90メートル』。山時聡真は、東京の大学に進学する夢と、介護が必要な母への想いに揺れ動く高校生、藤村を演じた。

山時聡真 写真=杉山拓也/文藝春秋

オーディションの場で「母親に電話」

 重い題材を扱いながらも、本作が描くのは悲劇ではなく、人と人との距離と絆だ。

「僕も中学高校時代は、佑と同じバスケ部でした。仕事で部活に行けないことも多かったので、部員のみんなに申し訳ないと思う佑の気持ちは、よくわかります。佑はぶっきらぼうに見えるけれど、すごく友達思い。繊細なくせに、強がってみせる一面もあるので、そんな高校生男子ならではの一面も見えるように意識しました」

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©2026映画『90メートル』製作委員会

 オーディションの場では、演じる人にとって“お母さん”がどういう存在なのか、関係性を認識するため、監督から「母親に電話をする」という課題も出されたという。

「『いま、俳優としての活動の場が広がっていることを親としてどう思うか』というテーマで10分くらい母と話しているところが見たいと言われ、すごくビックリしました。僕よりも電話口の母のほうが緊張していたと思います。母とは普段からよく話をするものの、こんな真面目な話はしたことがなかったので、少し恥ずかしかったですね」

介護という現実を等身大の自分で演じる

 役づくりをするうえでは、佑がヤングケアラーとしての自分の状況を特別なものだと思っていないところが、いちばん難しかったと振り返る。

「本作は、親の介護をする健気でかわいそうな高校生の話ではありません。家族や友達の絆、優しさとあたたかさを描いた作品なので、そこは間違えないようにしなきゃいけない、と思っていました」

©2026映画『90メートル』製作委員会

 母・美咲(菅野美穂)の介護シーンでは“家族の介護”に注力したと話す。

「もちろん、専門家の方にも教えていただきましたが、プロと同じようにやってみると、逆にリアリティーが感じられないんです。自分で介護シーンを動画に撮って見返しながら、いちいちかけ声をしないとか、両手でやるべき動作を片手ですませてしまうなど、家族が毎日やっていたらこうなるだろうな、ということを考えながら演技に取り入れていきました」