第二の課題は、「一帯一路(BRI)」構想の機能不全である。
中国にとってイランは、単なる資源供給国ではない。ユーラシア大陸を横断し、ロシアや欧州、インドを結ぶ「国際南北輸送回廊(INSTC)」の核心的な結節点だった。バンダル・アッバース港を起点とする物流ルートは、米国の支配下にある海上航路を迂回するための「戦略的バックドア」として期待されていた。しかし、米・イスラエル連合軍による激烈な空爆は、これらのインフラ投資リスクを極限まで高めた。中国が過去十数年にわたり投じてきた巨額の資金で構築した多国間物流ネットワークは、今や機能停止の危機に瀕している。陸上物流網という「西側への対抗軸」が傷ついたことは、習近平指導部が進める広域経済圏構想にとって、計り知れない戦略的損失である。
第三の課題は、中国外交の「限界」の露呈である。
2023年、中国はサウジアラビアとイランの国交正常化を仲介し、「新たな中東の調停者」として喝采を浴びた。しかし、実際の戦火が上がったとき、中国が提供できたのは国連での非難声明や特使派遣といった、従来の「安保なき外交」の延長線上に過ぎなかった。湾岸諸国は、イランの報復攻撃に直面した際、結局のところ米軍のミサイル防衛システムという「安保の傘」の下へ回帰した。中国がどれほど経済的な便宜を図ろうとも、国家の存亡に関わる安全保障の局面において、中国はアメリカに代わる存在になり得ないことが白日の下にさらされたのだ。中国が夢見た「米国覇権なき多極的中東」というビジョンは、むしろ戦争によって遠のいた。
“経済だけの大国”という壁
これらの課題は、中国に対し「経済力だけでは大国としての地位を維持できない」という厳しい現実を突きつけている。利益を享受しながら、システム維持のコストを払わないという中国流の「フリーライダー」的な外交姿勢は、中東という現実の中で大きな壁に直面している。