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イマドキの温泉宿はベッドが基本
反面、このような温泉宿の文化は、温泉情緒や旅情、おもてなしという側面からも考察されるべきであるが、これは別の機会に譲ることにしたい。話を戻して、温泉宿の快適さや食事の美味しさといった辺りがホテル評論家の視座としては自然であり、温泉宿の取材でもそうしたポイントに重点が置かれる。
最近の取材で印象深いのは“温泉宿のホテル化”だ。温泉宿にしてベッドやソファを配した洋室が多くを占める施設をはじめ、和室にベッドやソファを置く宿も多い。そこまでではなくとも和室にローベッド(マットレス)はいまや温泉宿のマストアイテムとも言えるほど。こうした温泉宿のほとんどで仲居さんは見かけず、ベッドなので布団の上げ下ろしも必要ない。プライバシー感は高いといえる。
温泉宿は温泉を主体にした宿泊施設とはいえ、最近では天然温泉をウリにするビジネスホテルもある。こうなるとホテルとの違いは何かと考えさせられる。例えば、温泉宿ではパブリックスペースに浴衣姿やスリッパで訪れるゲストが殆どという点は特徴。また、温泉宿の食事については、泊食分離というワードも聞かれるようになったが、やはり夕食がセットかつ最大の楽しみという点は、温泉宿とホテルの大きな違いなのかもしれない。お風呂上がりに気軽な格好でその土地毎、四季折々の料理を楽しめるのは、まさに温泉宿の魅力と言えるだろう。