ホテルをセレクトするとき“朝食で決める”という方もいるだろう。最近、ビジネスホテルから高級ホテルまで、朝食の充実ぶりには目を見張るものがある。いまや朝食の充実度は、リピーターを生む大切な要素であると、ホテルも力を入れる分野なのだ。
ホテル朝食の進化は、ピーク・エンドの法則と関係しているのかもしれない。「われわれは自分自身の過去の経験をそのピーク(最高潮)時にどうだったかと、それがどう終わったか(終了間際)の印象だけでほぼ判断している」という法則のことだ。不利な状況でも、去り方次第で好印象を残せる効果ともいわれる。
滞在中に不快な思いがあっても最高の朝食があれば、そのホテルに対する印象が変わるという経験は筆者にもある。そこで今回は、高級ホテルの非日常感溢れるモーニングから賑やかな朝食ブッフェ、ビジネスホテルの無料朝食や旅館朝食など、最近印象に残ったホテル・旅館の朝食をピックアップしたい。
穴場ホテルの穴場朝食
今年に入ってまず印象的だったのが「ホテル・ラ・レゾン 大阪(現「クインテッサホテル大阪ベイ」)」(大阪市住之江区)だ。ホテル朝食でブッフェスタイルは定番であるが、お決まりの内容やメニューに“まぁこんなものか”と感じることは多い。一方、こちらはデラックスホテルということを考えてもちょっと凄い。
メニュー数はなんと約80種類。野菜の種類と美味しさも印象的であるが、肉料理が充実しているのも目を見張る。仮に夕食ブッフェだとしても充実の内容。これで2500円とはにわかに信じがたい。器や彩りなど提供方法に気づかいが感じられるのも嬉しい。テキパキと無駄のない動きのスタッフも好印象だ。
星野リゾートの凄い朝食
また、旅館でいえば「星のや京都(京都市西京区)」の九条ネギと鴨肉の白味噌鍋は凄かった。「星のや」といえば、星野リゾートのラグジュアリーブランド。これまでも同ブランドを何度か利用したことはあるが、今年に入って経験した旅館朝食としては圧巻の内容だった。旬の九条ネギや鴨肉を惜しみなく使った鍋だ。朝から鍋である。
みそ汁の鍋は時々見かけるが、こんな本格的な鍋で旬の食材を味わえるのは贅沢の一言だ。白味噌で仕立てた旨味たっぷりの出汁を味わえる幸せ。夕食から朝食まで、久保田一郎料理長の一貫したスタンスを感じる料理は感動的である。何より客室で、大切な人とゆったりした朝食時間を過ごせるのは何ものにも代えがたい。