平凡な日常を過ごす専業主婦が、出来心で「金のおりん」を盗んだことで金に魅了され、100億円の金茶碗を盗む計画を実行する──そんな破天荒なクライム・コメディの主演を務める田中麗奈さんは、これまでの出演作ではシリアスな役柄が多い印象がある。
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女優になれなかった“もうひとりの自分”を重ねた
──コメディで主演というのは珍しくないですか?
はい、映画ではあまりやってないですね。でも私はコメディというより、ヒューマンドラマのつもりで演じました。主人公・美香子の変化というか成長の物語でもあって、そこにブラックジョークが入っているという印象。単にコメディではない、独特な作品に仕上がっていると思います。
──独特だとすると、役作りには苦労されたのですか?
これまでと違うのは“もうひとりの自分の人生”だと思って演じたことです。彼女(美香子)は子どもの頃は特別な人物になりたかった。自分にしかできないことをやりたかったんですけど、それが叶わず“普通”であることに慣れてしまって、もはや心が動かない。私も女優という職業に就けなかったら、同じような状態になっていたと思うんです。
──女優という仕事に助けられた面はありますか?
5歳の時に女優を志したのですが、それが叶うまでの時間はとても苦しかったんです。「どうして私は福岡県久留米市で生まれたのか」と、ふるさとに対しても恨めしい気持ちを抱いてしまったほど。なりたい自分になれなかった時期の経験は彼女と重なる部分があって、だから自分の分身なんです。
──願いが叶わず、怠惰な日々をおくる美香子の目には本当に生気がありませんでした。
まさに美香子のマインドでお芝居していたので、撮影時はなぜか体が重く、頭はもたっとして、楽しい感情が湧かないことも。ただ、だんだんと慣れて切り替えられるようになり、「カットがかかると顔色がぱっと明るくなる」と萱野監督に言われました。

