『旅と日々』は漫画家のつげ義春さんの「海辺の叙景」と「ほんやら洞のべんさん」という二つの短編を原作とした作品です。大学生の時に読んで以来惹かれていた漫画なので、プロデューサーに原作として提案された時は心躍りました。でも、どう映画にすればいいのか、すごく難しかった。それが、日韓で活躍する俳優のシム・ウンギョンさんに主演をお願いすることを思いついて、一気に像を結んだ。2022年の釜山国際映画祭で彼女に会って以来、その時の印象が頭の片隅にずっと残っていました。主人公とウンギョンさんとの間に何か共通するものがあると直感的に思いました。格好良くて面白い、実直で素敵な人です。
中学3年生で初めての撮影
今では映画監督として日々映画を中心に生活が回っていますが、初めて映画を撮ったのは中学3年生でした。追う生徒と追われる生徒がいて、学校の中を走り回るだけの、3分の短編です。
実は、映画は見るよりも撮る方に先に熱中しました。きっかけを思い返すと、小学校の頃は学園祭の演劇がとても好きだったんです。演出も演技も面白かった。たとえば、小学生ってステージに対して背が小さい。舞台で映えないと思った。それで、「ステージ上に段差を作って、段の上や下で演じるのはどうか」と先生に提案しました。4年生の時、『裸の王様』の王様の役をやりたかったけれど、選ばれなくて泣いたこともありました。結局、王様に服を売りつける詐欺師の役をやって、長台詞の時に照明が途中で変化するアイデアを提案したりと、楽しかったです。
中学3年の時、学園祭で演劇のチームに入りました。先生も気合いが入っていた。ただ、当時の僕は反抗心旺盛で、それが嫌だった(笑)。それで、「映画を作りたいので演劇チームを抜けます」と先生に言ったところ、許されたんです。自主性が尊重されたのか、厄介払いだったのか。どちらも理由な気がします。
※約7000字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年3月号に掲載されています(三宅唱「映画もサッカーも監督の仕事は似ている」)。
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出典元
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2026年3月号
2026年2月10日 発売
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