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「サイゼに行けるようになった」岸田文雄
総裁選なんだから政治家同士が対決するのは当たり前のはずだが、もはや「出るだけ損」の様相だ。
象徴的なのは岸田派の会長・岸田文雄である。出馬が取り沙汰されるも「みんなが干されたら申し訳ない。それでも俺が出て問題ないのか?」(注3)と同派の1・2回生との意見交換会で繰り返し聞き、結局、安倍支持を表明する。その甲斐あってか、この8月、安倍や麻生らが集う恒例の「笹川別荘」に招かれている。女子高生でいえば教室の空気を読んで最上位のグループとの摩擦をおこさぬようにしていると、その甲斐あって放課後、サイゼに一緒にいけるようになったかのようである。
ケンカしても忘れる、を繰り返すのが政治だった
激しい派閥抗争の時代を生き、総理総裁にまで登り詰めた宮沢喜一は、ケンカしても2年くらい、早い者だと3ヶ月ぐらいでそれを忘れてしまうのが政治の世界だと述べ、こう続けている。「政治というのは案外、関係であってサブスタンス(本質)じゃない。関係なんて『綾』ですからどうとでもなるんですな、政治の世界というのは」(注4)。だから「敵の敵は味方」「昨日の敵は今日の友」という具合に味方したり裏切ったりが繰り返される。
こうした節操のない離合集散を批判する向きもあるが、じつは権力闘争が政治を流動化させ、過去の遺恨を水に流して新しい政治を生んできたといえるのではなかったか。「安倍一強」の今となっては……の話だが。