1ページ目から読む
3/3ページ目

アイドルにもうるさい石破茂の「AKB論」

 ところで石破といえばオタクである。そもそも軍オタ代議士としてブレイクする。しかしお誂え向きの防衛大臣になるも、職員相手に長々と兵器談義をするなど、オタクのダメさをまるだしにしてしまう。「政治家に求めているのは法案と予算案を通す力量だが、彼は単なるオタクで政治家とは対極のキャラクター」(注5)との声まで出る始末であった。

©文藝春秋

 鉄道好きでも知られるが、アイドルにもうるさい。週刊ポストで河合奈保子について熱弁をふるったり、「日本におけるアイドルの時代は、1978年のキャンディーズ解散をもって終わったと思います」(注6)と持論を語るなどする。

 そうしたアイドル史観をもつ石破はAKBをこう論ずる。「人気投票にすぎないはずの“総選挙”なるものがNHKニュースで報道されるようになると、もはや私の目には、『巨大ビジネス』としての仕組みしか見えなくなってしまう。何十億、何百億というお金が動き、それを維持するために、どんどん新しい『商品としてのアイドル』が投入され、それが飽きられると、さらに新しいアイドルが投入される」(注7)。

ADVERTISEMENT

三角大福中から麻垣康三 総裁選というセンター争い

 こうしてみるとAKBの総選挙は、自民党の総裁選と重なり合うところがある。トップ争いをイベント化してメディアを巻き込み、党のスターたちをプロモーションする。そうして新陳代謝を繰り返しながら、政治の中心であり続ける。

©文藝春秋

 石破自身が「佐藤長期政権の時には三角大福中、中曽根長期政権の時には安竹宮渡、小泉長期政権の後には麻垣康三がいた」(注8)と語るように、長期政権は複数人の後継候補を産み出し、それらが苛烈な権力闘争することで活力を生んできた。気が早いが、安倍の3期目にはこうした次期センター候補らの争いが勃発するだろう。

 これまでの、さらには総裁選で深まる政争の遺恨は水に流され、“反安倍”石破にもいずれ春は訪れるのだろうか。雪が溶けて川になって流れてゆくのは世の理、石破の愛するキャンディーズ「春一番」でもそう歌われるところである。

(注1)週刊文春2018年7月26日号
(注2)週刊文春2018年8月16・23日号
(注3)週刊文春2018年7月19日号
(注4)田崎史郎『竹下派 死闘の七十日』文春文庫
(注5)文藝春秋2014年11月号
(注6)週刊ポスト2016年10月28日号
(注7)文藝春秋2015年8月号
(注8)サンデー毎日2018年5月20日