行為への嫌悪感はあったが、学校に行けば距離を置くことは難しく、堀さんはその後も声をかけられれば従った。

「後から山本に言われたのは『これは普通の行為で別に悪いことじゃないと君に繰り返し教えた』『男性に警戒心を持たないように誘導した』ということでした。だからなのか、最初の怖さもだんだん麻痺していって。体を触られるのは男女の関係であって、教師と生徒の関係じゃないということを当時ははっきり認識できなかった」

 18歳の誕生日を迎えた直後から、ホテルに連れていかれた。山本は「絵を描く資料にする」と言って裸の彼女を縄で緊縛し、写真に収めるなどした。

ADVERTISEMENT

 堀さんがトイレに行こうとするとその様子を見せろと迫ってきた。嫌がる堀さんが隙をついてトイレに駆け込んで鍵をかけると、激高した山本から「君は騙し討ちをしたな。私は騙し討ちをされるのが大嫌いだ」と執拗に責められ、以降はトイレへの同行を強制されるようになった。

 周囲の大人にSOSを発しなかったわけではない。3年生の頃、北芸の女性教師に「山本先生から誘われてラブホテルに行った。良くないことだと思うので先生から注意してほしい」と相談したことがあった。このことは後に相談を受けた教師自身が認めている。

 しかし、堀さんが「大事にはしたくないんですけど」と前置きしたからという理由で、女性教師は山本を個人的に注意するに留まったらしい。堀さんは、学校側のこの初動ミスも被害を拡大したと考えている。

山本章一の『堕天作戦』

「あの子は性的な好奇心が旺盛」

 ある時、山本が、SMのボンデージ衣装を「他の子に着せようと思ったけどちょっと大きかったから」と言って持ってきたことがあった。その“他の子”の名前こそ明言を避けたが、堀さんの脳裏には、1学年上の女子生徒が思い浮かんだ。山本が日頃から「あの子は性的な好奇心が旺盛でいつも私とそういう話をしている」と語っていた生徒だ。堀さんのクラスの授業が終わった直後に突然乱入し、山本に「卒業したら結婚しようね」と言って抱きつき、教室を静まり返らせたこともあった。

 また、堀さんの1学年下の女子生徒とも、山本は性的なメールのやりとりをしていたらしい。それを知った学校側から注意を受けたという話を堀さんは耳にしていたが、後年、別の教師から「あの二人も肉体関係があった」と聞かされた。

 つまり、1学年に1人は山本の性的対象となる女子生徒がいた可能性があると、堀さんは見ている。

前編から読む)

※この続きでは、北芸の不誠実な対応についても報じています。秋山千佳氏の記事「マンガワン事件 もう一人の被害女性の怒り」は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」で先行配信中。4月10日発売の月刊文藝春秋5月号にも掲載されます。

文藝春秋

この記事の全文は「文藝春秋PLUS」で購読できます
マンガワン事件 もう一人の被害女性の怒り
最初から記事を読む 「北芸高校にも責任がある」マンガワン事件 “もう一人の被害女性”が怒りの告発