荘子it そう。「それは悪しき男性性だから克服しよう」と言われても、ある種の男にとっては生理的な反応としてあって、蓋をするのが難しい。それを回避するのが、一段上のレイヤーに変換して捉える方法です。例えばあえて「健康がいま一番ラディカルだ」と言ってみたり、筋トレ的な文脈に乗せてみたり。言ってしまえば、そうやって「カジュアルにスマートに癒やされている俺、かっこいい」という形に持っていかないと、自分すらケアの場に勧誘できないんです(笑)。
鳥飼 なるほど。世の中で語られているケアのイメージが、「自分のためにお茶を入れてあげる」みたいなこれまでの女性文化の文脈的なものに偏っていて、男性の場合はそれとはやり方が違うのかもしれないですね。
荘子it もちろんケアは大事なんだけど、今の「悪しき男性性批判」と「ケア」の文脈が密接に合体しすぎると、結果的に女性的なケアのあり方しか正しくないという話になりがちだし、それだけを突きつけられると難しいと感じる男性も多い。だから福尾匠くんを誘って一緒にポッドキャスト(「シットとシッポ」)を始めてみた。男性と女性の二項対立とか社会的な言葉では掬いきれない話を男友達と言いあうことで、間接的にケアされるようなところがあるんです。
それはある種の男性的なケアの形ではあるけど、前述の筋トレや自己啓発的なセルフケアではない、というバランスはある程度意識しています。ただ、そのバランス感覚自体もあんまり考えすぎると、『「カジュアルにスマートに癒やされている俺、かっこいい」よりかっこいいでしょ?』という無限後退みたいになっちゃって(笑)、それこそ福尾くんの言葉で「密」になってしまう。僕の改姓の無根拠さ/無責任さにも通じる話ですが、「疎」なあり方のポジティブな可能性を探ってるんです。
言葉とイムズを超えた「より良くあろうとすること」
荘子it 何かのカテゴリーに入りたくない、というより、「こういうカテゴリーの人間が言ってる」という評価基準の窮屈さから逃れて、自分の言葉や作品の表現を真に受けてもらうにはどうしたらいいかって考えてます。
鳥飼 究極、リベラルだとかフェミニストだとか言わなくても、人間が、自分がより良くあろうとすればいいだけなんですよね。そのことを相手が信じてくれさえすれば、言葉はいらない。
荘子it その通りですね。一つの進歩的な思想だけで世界を埋め尽くすことができない以上、それぞれがそれぞれの環境で最高なやり方を模索してみる。それがたまに脱カテゴリー的に互いに影響を与えあったりするけれど、それはすごい特別な瞬間だけなんじゃないかな。その特別な瞬間に言うべきことを言えるか、はすごく大事だと思うし、結婚もその一つかもしれません。
鳥飼 荘子さんとお話していてワクワクしたのは、イズムとかではなくて、ただただラッパーという表現活動、行動原理のなかに奥さんの苗字を選んだこととか、日々結婚の関係で傷ついたり、修正したりというトライ&エラーがあること。そこから発せられる言葉の強さがあるから信頼できるなと思いました。楽しかった。またお話ししましょう。
【告知⓵】4/27 (月)19時~鳥飼茜×大島育宙トークイベント@青山ブックセンター本店
「結婚。それは祝祭か、墓場か。
『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』を語る夜」男女が真に平和に共に生きていくためには、選択的夫婦別姓制度など結婚制度のアップデートが必要だと考える鳥飼さん。そして名字変更の社会的コストや、制度と個人の自由のバランスなど、冷静でロジカルな視点からこのテーマを見つめる大島さん。フィクション・エンタメの考察も交え、結婚の理不尽から理想のパートナーシップまで、とことん語り合う一夜です
次のページ 写真ページはこちら【告知②】鳥飼茜さん×荘子itさん『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』『DosAtomos』特別対談動画@コトゴトブックス
本対談とは別に、「作者からあずかった本に、作者とともに企画した特典を添えて、一冊一冊贈る」がコンセプトのコトゴトブックスさんでも鳥飼茜さん×荘子itさんの対談動画が販売中です! ぜひこちらの記事とあわせて、よりディープにお楽しみください。
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