一万円札の肖像でおなじみ、渋沢栄一の教えをまとめた本として、広く知られるのが『論語と算盤』だ。ただし内容はなかなか難解であり、読破したことのある向きは少ないと思われる。
ならばそのエッセンスを汲み取って、漫画化して読めるようにしたらどうか。そんな考えのもとつくられたのが、『漫画 論語と算盤』(徳間書店)だ。
手がけたのは、漫画家コンビの羽賀翔一・ワタベヒツジ。羽賀翔一といえば、大ヒット作『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)の漫画担当である。同書は古典的名著として読み継がれてきた『君たちはどう生きるか』のストーリーを漫画に仕立てて、わかりやすく伝えたもの。名著を漫画化するプロジェクトの第2弾として『論語と算盤』が企画され、このたび上梓と相成った。(全3回の1回目/マンガを読む)
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「こういうスタイルで描くようになるとは…」
——そもそもなぜ名著を漫画にすることを始めたのでしょうか。
羽賀翔一さん(以下、羽賀) 学生時代に漫画家になろうと決意したときは、こういうスタイルで描くようになるとは考えてもいませんでした。もっとこう週刊や月刊の雑誌で連載を持って、いわゆる漫画の王道を歩む姿を思い描いていたんですけど……。たまたま『君たちはどう生きるか』の企画を旧知の編集者が持ってきて、それに乗っかったのが始まりでした。
原作を読んでエッセンスを汲み取り、漫画のキャラクターとストーリーに落とし込んでいく作業は、やってみると自分に向いているとは思いました。漫画といえども突飛なつくりごとではなく、社会と接続する部分が必要だとは以前から考えていたので。
また自分がもともと文学好きな影響もあって、僕は漫画をひとつの「言語」と捉えてきました。わかりやすさが売りの漫画という言語を使って、価値はあるけど難しそうで、どこかとっつきにくいコンテンツを「翻訳」していくのはおもしろいし、ぜひやってみたいと以前から思っていました。
ワタベヒツジさん(以下、ワタベ) 僕はここ数年、羽賀さんとタッグを組んで漫画制作していますが、羽賀さんはものごとをよく考えて深く理解する力に優れていると感じます。僕のほうはそのときの印象や感じたことをそのまま口に出すタイプなので、うまく補い合えればいいと思っています。
羽賀さんはかなりの読書家なのに、僕は名著と言われている本もほとんど読んだことがないようなタイプ。予備知識がない分、「こういう本があるのか」「はるか昔にこんなことを説く人がいたんだ」と、いちいち驚いたり学んだりできています。
僕と同じように、名著を読み慣れていない人は世に多いはず。僕がこれだけ楽しめるのだから、名著のエッセンスをわかりやすく摂取できる漫画は、ほかの人たちの心にもきっと「刺さる」だろうとは思っていました。

