どのようにストーリーを立ち上げるのか
——『漫画 論語と算盤』も『漫画 君たちはどう生きるか』も、著名な「元ネタ」があるわけですが、漫画家としては「本当はオリジナル作品をやりたい」といった欲求はないのでしょうか。
羽賀 『君たちはどう生きるか』は、原作にかなり忠実につくっていますが、『論語と算盤』のほうはもともと渋沢栄一の言葉を集めたもので、物語があるわけでもないので、漫画化にあたってキャラクターを設定しストーリーを僕らでつくっていきました。これはほぼオリジナルの漫画と言っていいでしょう。
とくにキャラクターは、しっかり立てられたと思っています。承認欲求が強い「あぐり」や、強さを過剰なほど求める「ショウタ」、何でも金儲けの話に結びつけてしまう「算盤男」……。彼らの行動や考えを通して、『論語と算盤』のエッセンスを深く理解できる構造にしていきました。
——なぜいま『論語と算盤』に着目したのでしょうか。渋沢栄一が一万円札の肖像になったことはひとつのきっかけと推察しますが、ほかに個人的な動機はありましたか?
羽賀 大谷翔平選手が自身でつくった曼荼羅チャート(目標達成シート)に「論語と算盤を読む」と書かれていたことが、強く心に残っていました。あれほどの選手をかたちづくる一助になった本なら、だれにとってもためになるだろうと。
それで実際に読んでみると、最初の印象は、「決して特別なことを語っているのではない、ストレートで普遍的な内容の本」。それなのにすごく説得力に満ちているのは不思議でした。読んでいるだけで背筋がピンと伸ばされるような感覚があります。日本経済の根幹をつくった渋沢栄一という人物の存在感が大きいからこそ、言葉に力が宿るのでしょう。そんな渋沢栄一をどう漫画のキャラクターにしていくかは、難しいですが挑戦しがいのあることでした。
ワタベ 渋沢栄一の教えは、両極のものを自分のなかにバランスよく取り入れるべしということ。それを「論語と算盤」という言い方で伝えるというのは、うまいなと思いました。普遍的な教えを具体的な言葉に落とし込んでくれているから、『論語と算盤』はいま読む価値のある本だなと思いました。
——『論語と算盤』を、漫画に仕立て直していくプロセスは、どのようなものだったのでしょうか。

