現状維持バイアスを打破する2つの方法

坂井 この不行為後悔を活用すると、冒頭の現状維持バイアスが打破できるわけです。「死ぬ時に後悔しそうなこと」を考えると一念発起して行動できるというのは、自己啓発あるあるです。スティーブ・ジョブズも「メメント・モリ(死を意識せよ)」と言っていたじゃないですか。現状維持バイアスを打破する方法は本当は2つあって、1つ目は「長期的に後悔しないことを選ぶ」という「後悔最小化戦略」。2つ目が「保有効果を倒す」。

ぐんぴぃ 2つあるよなぁ〜、坂井さんの話って。

坂井 保有効果は興味深くて、自分の今持っているものや地位などを過大評価する傾向のことです。「新たに得たいもの」より「今持っているものを失いたくない」という欲求の方が強い。

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ぐんぴぃ あるある! 人間の欲求ってほぼそうですもんね。

坂井 ぐんぴぃさんが今失いたくないものは何ですか?

ぐんぴぃ 俺はこのバキ童ドリームから降りたくねぇ! このYouTubeの再生数を落としたくねぇ! YouTubeの再生数なんて全く気にしてなかったのに、ここまで伸びちゃったから、いつの間にかYouTubeのことを考えてる。手に入れちゃったものを減らすのが怖い。気にしないようにしてるんですけど。

©平松市聖/文藝春秋

坂井 それによって、ぐんぴぃさんはどういう行動をとっているんですか?

ぐんぴぃ YouTubeに使う時間を減らしてお笑いに使う時間を増やしたいんですけど、いつの間にか漫才やコントに使う時間が減ってる。「俺、こんなにYouTubeをやりたいんだっけ?」ってぞっとすることはありますね。でも1回手に入れたものを失いたくないという気持ちは誰しもあるだろうなぁ。これが保有効果か!

坂井 保有効果とは、持っているものを過大評価してしまっている現象なわけです。だから、「今持っているものは取るに足らない」と思えるかどうかが重要なんですよ。

ぐんぴぃ うわあ、いいですね! YouTubeも、もともと取るに足らないと思っていたはずなんですよ。

坂井 僕はギリ回避できたと思うんです。30歳の時に起業したのですが、当時DeNAの部長ポジションにいたんです。そこそこの年収があって、そこそこのポジションにいた。その時に「このポジションを捨ててまで起業して、めちゃくちゃ年収が下がるかもしれないし、子どもが生まれる予定もある。どうしよう」という悩みがあったんです。でも、「DeNAの部長って、世の中にとってすげえのか?」って気づいてしまい。別になんもすごくないし、取るに足らないと。

ぐんぴぃ そんなことないですよ(笑)。

坂井 大学時代に、肩肘界隈の頂点みたいな、起業する人たちのコミュニティにいたんです。その人たちの方がメキメキ実力をつけているし、時価総額数千億円の会社の部長よりも、数十億、数百億円の会社の執行役員や取締役の方がすごいと気づいてしまって。「自分が大事にしているもの、本当にいる?」と。唯一自分にとって大事なのは住宅ローンだと思って、速攻で家だけ買って会社を辞めたんですよ。でもぐんぴぃさんのYouTubeは、手放しちゃいけない、かけがえのないものな気がするんです。みんなの居場所ですよね。

ぐんぴぃ みんなの居場所になってますかね(笑)。でも確かに、僕も「取るに足らない」と思い込まないとブックオフを辞められなかったもんなぁ。もともと芸人になりたかったから、芸人にならないと死ぬ前に後悔すると思って、なんとか辞めて芸人になった。今の自分を否定できないと次に進めなかったですね、あの時は。

坂井 あと5年10年、ブックオフにいたらどうなっていたと思いますか?

ぐんぴぃ もっと地位もできて、辞められなかったと思います。