ドラマが焦点を当てるのは、失踪そのものではなく、被害者であるはずの母親が48時間にわたって厳しい事情聴取を受けた時間だ。
制作側は、警察資料や記録証言、ドキュメンタリー資料に基づく作品だとしている。事件から18年経った今、イギリスでは捜査や報道が家族に何をもたらしたのかという問題も、改めて見つめ直されている。
有力容疑者を釈放 なぜ未解決に
一方で、現実の捜査は依然として決定打を欠いたままだ。
ドイツ当局が主要容疑者とみなしてきたドイツ人のクリスチャン・ブリュックナー氏は、別件の性犯罪で服役していたが、マデリンちゃん事件では起訴されないまま2025年に釈放された。
元刑事で、イギリス調査報道記者のマーク・ウィリアムズトマス氏は、発生直後から現地に入り、継続的にこの事件を追ってきた。
ブリュックナー氏について「ドイツ当局が主要容疑者とみなしてきたが、イギリス警察もポルトガル警察も同じ温度感ではなかった」と語る。そのうえで、「5年以上捜査してきたにもかかわらず、事情聴取や起訴に十分な証拠を持っていない」と指摘した。
なぜマデリンちゃん事件はここまで長く未解決のままなのか。
ウィリアムズトマス氏が最も重く見ているのは、捜査の失敗だと指摘する。幼い子どもの失踪事件では最初の1時間から数時間、いわゆる「ゴールデンアワー」が極めて重要だが、この事件では初動で十分な土台作りがなされなかったという。
当初は、見知らぬ第三者による誘拐として捜査が始まり、途中から家族へ焦点を移すなど、捜査の軸がぶれた。
その結果、初期の数時間から数日で得られたはずの証拠が失われた可能性があるという。ウィリアムズトマス氏は「順番が完全に逆だった」として、ポルトガル警察の初動を厳しく批判した。
また、異例の国際捜査になった点にも触れた。
ポルトガルの事件でありながら、ある意味ではイギリス警察が主導し、別の意味ではドイツ当局が主導した。そうしたねじれた構図が、事件をさらに複雑にしたとの見方だ。



