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ヒチコックの「裏窓」を彷彿とさせるサスペンス

 夏休みにバイク事故で脚を骨折した大学生のカン・チャオ(フォン・ズータオ)は、入院した病院の窓から見える邸宅に暮らす美しい女性に興味を持つ。ある夜、チャオは彼女が父親らしき男性にナイフを持って襲いかかる場面を目撃する。退院後、チャオはその女性シア・インイン(ヤン・ツァイユー)に接近し事の真相を探ろうとするが、その一方でますますインインの魅力に惹かれていき……。

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 ヒチコックの「裏窓」を彷彿とさせるサスペンスと青年の切ない恋が交錯し、観客をぐいぐいと引き込んでいく。

 試写会を観た熱心なファンたちの感想は、

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「主演の二人が美しすぎる! TAOちゃんがナチュラルで超セクシー」(EXO時代からのTAOくんファン)

「原作の当時にはなかったスマホを使ったトリックが追加されるなど、ミステリー映画には珍しく原作よりもミステリー度がアップしている」(島田ミステリーの愛読者)

 さらにこの作品には、日本の映画界の将来を予見する要素が入っているという。

日本の小説の著作権が“爆買い”される現象も

「この作品は中国映画で、TAOくんとヒロイン役のヤンさんは中国の俳優ですがその他のキャストは台湾と香港の役者さんたちで、監督のチャン・ロンジーさんは台湾の人、撮影はイギリスBBCの人気ドラマ『シャーロック』(ベネディクト・カンバーバッチ主演)を担当したカメラマンのスティーブ・ロウスさん、そして原作は日本人というじつに国際的な映画です」(島田荘司氏)

 近年、中国は大変な映画ブーム。映画館もどんどん新設されていて、すでに全国で4万スクリーンに達したとか。

「日本映画もネットを介して視聴されていて人気があるのですが、政治的理由から公式に上映が認められる作品は年に数本あるかないか(今年は10本以上が上映された)。一方、日本人の原作であっても中国映画や日中共同制作なら国内映画として扱われるので、数年前から日本の小説の著作権が“爆買い”されるといった現象も起こっています。中国でも人気の東野圭吾作品はすでに3篇が映画化予定で、『夏、19歳の肖像』は日本人作家が原作の中国映画の先駆け的な作品ということになります」(映画プロデューサー)

 映画も多国籍の才能が結集して製作される時代になっていくようだ。

新装版 夏、19歳の肖像 (文春文庫)

島田 荘司(著)

文藝春秋
2005年5月1日 発売

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