「なにせ研究する時間もありませんから……」

 ――これはあまり嬉しくないデータかもしれませんが、糸谷さんから見て、対藤井戦の成績は1勝9敗です。初対戦から8連敗して、昨年2月の叡王戦準決勝が待望の初勝利でした。2024年、テレビのバラエティ番組で「引退までに(藤井から)1勝したい」と冗談めかした発言が放送されたこともありました。

 糸谷 あの時は居酒屋で棋士仲間と飲んでいたら、おそらく偶然、バラエティの取材が来たんです。私を含めて5人いましたが、誰も藤井さんに勝ったことがなかった(笑)。ただ、その後、私は初勝利を挙げられました。0と1とでは、全く違います。過去に1勝しているので、攻略の糸口はあるはずです。まあ、一つ勝っても、さらに三つ掴み取らなければいけないので大変ですが。

今回の名人戦第1局では藤井聡太名人が勝利(写真は2025年の王位戦) ©時事通信社

 ――例えば、王将戦での永瀬九段や、藤井名人から二度、タイトルを奪取した伊藤匠二冠の戦いぶりは参考になりますか?

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 糸谷 お二人は角換わりや相掛かりという本筋の将棋を突き詰めていく「研究将棋」で勝負しています。最先端の将棋で、見ている分には面白いのですが、私の将棋の参考にはなりません。なにせ研究する時間もありませんから、これまで通り「アイデア将棋」をぶつけることになります。藤井名人にとっても、ある程度、未知の将棋になると思いますから、そこでどう対応してくるか。完璧に応じられたら仕方がないですが、藤井名人も人間です。少しでも困ってくれるような将棋を増やしたい。たとえ序盤の作戦で成果を上げられなかったとしても、そこからベストを尽くせば勝機はあると思っています。

※この続きでは、棋士と理事職の“二刀流”の忙しさを糸谷九段が語っています。約6800字の全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年5月号に掲載されています(糸谷哲郎「二刀流、藤井名人に挑む」)。

「文藝春秋PLUS」では、この他にも藤井聡太名人と対局した棋士の肉声を伝えています。

伊藤匠「藤井六冠に勝ったと思った瞬間
永瀬拓矢「藤井八冠は人間っぽくない
深浦康市「藤井と羽生はどっちが強い?

文藝春秋

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二刀流、藤井名人に挑む

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】東京極秘対談 ティール×トッド 世界は終末を迎えているのか/池上彰×佐藤優 “暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか/官邸官僚の第二の人生

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