過去の経験は医師になった今も根付いている

――大きな回り道でしたが、「あのときこうすればよかった」と後悔することはありますか?

澤田 後悔はしてはいけないと思っています。それは過去の自分を否定することで、高校生のときは、ただ人生を楽しもうとしていたら、結果的にヤンキーになっていた、というだけのことですから。過去を否定しないためにも、今を頑張ることがとても大事だと思っています。今を懸命に生きさえすれば、17歳の自分も24歳の自分も輝くし、50歳になった自分もきっと輝くのではないかと。

――ちなみに、当時のヤンキーだった自分が顔を出す瞬間はありますか?

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かつての澤田さん 本人提供

澤田 プライベートでは今もバイクが趣味で、ふらっと北海道を1周しにバイクで旅に行ったりしています。医師としては、プロフェッショナルなので診療中にヤンキーっぽさがでることはないですが、たまに後輩から口調や目つきがめっちゃ怖いと言われることはあります(笑)。

――それはどんなときですか?

澤田 診療上、守るべきルールを疎かにしているときや、人にものを教わる姿勢がなっていないときは、ついきつくなってしまいます。ヤンキーの世界では上下関係が本当に厳しいですから。

 もっとも、僕自身も“ルールは破るためにある”というヤンキーの美学に惹かれてきたはずなのに、不良の世界で身についたのは反抗心ばかりではなく、筋を通す感覚でもあったのだと思います。だからこそ、いざ白衣を着ると“破っていいルールと、破ったら終わるルールは違う”と急にまともなことを言い出す。人間とは、なんとも都合よくできているものです。

 僕は回り道をした分、医学部にストレートで入ってきた人たちよりは、いろんな世界の人たちを見てきました。今、臨床医として本当に多様な境遇の患者さんにお会いしますが、親身に寄り添えるのも、過去の経験があったからだと思っています。パラパラで盛り上がっていた自分も、荒れていた自分も、今となってはどちらも否定すべき過去ではなく、医師となった今もすべて自分のなかで根付いていると感じます。