インフレが進む現在、住宅ローンは固定にした方がいいのか、それとも変動にした方がいいのか。「超インフレ時代を生き抜くための新・投資入門」(文春MOOK)より、一部抜粋し、元日銀マンが考える最適解をご紹介する。(全2回の2回目/最初から読む)
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住宅ローン、変動か固定か? その正解は人生観にある
では、このインフレ・円安時代を私たち個人がどう生き抜き、どうやって大切な資産を守っていけばいいのでしょうか。その個人の戦略に焦点を合わせましょう。
今、多くの人が直面している切実な問題が住宅ローンです。これまでの超低金利時代、8割から9割もの方が変動金利を選んできました。しかし、いよいよ日本でも金利上昇が現実味を帯びてきた。ここで変動のままでいいのか、固定に切り替えるべきかと悩むのは当然のことです。
これに対する私の考えは、正解は人それぞれの状況や人生観によって違うというものです。
まず、若い世代の方々について考えてみましょう。もし今後、変動金利が現在の固定金利を上回るような世の中になるとしたら、それはどういう状況でしょうか。おそらく、インフレ率がさらに高まり、それに伴って賃金もそれなりに上昇しているはずです。実質賃金の伸びがプラスにならないまでも、名目上の収入も増えている。そうであれば、金利が多少上がっても、支払いが不可能になるほどのダメージにはなりにくいと言えます。
さらに言えば、変動金利が固定金利を追い越すまでには、まだ一定の時間がかかります。その期間の差で享受できる低金利のメリットを考えれば、若い方なら変動金利という選択肢も依然として合理的かもしれません。
一方で、定年退職を間近に控えているような方の場合は話が別です。これから先、給料が大幅に増える見込みは少なく、年金生活に入っていく。そうした方にとって、住居費という固定費が変動すること自体が大きなリスクになります。将来の支払額を確定させ、家計のシミュレーションを確実なものにするという意味では、今のうちに固定金利でロックしてしまうという考え方は十分にあり得るでしょう。
結局のところ、自分の収入がインフレや金利上昇に連動して増えるのかどうかを見極めることが、住宅ローン選びの本当のポイントなのです。
円だけを持っていること、それが最大のリスク
次に、資産運用全般についてお話しします。円安が進む中で、私たちが最も警戒しなければならないのは日本円だけを資産として持っている状態です。
これまでの日本は、デフレやゼロインフレが続いていたので、現金(円)を銀行に預けておけば、その価値は維持されました。しかし今は違います。実質金利が大幅なマイナスになっているということは、円を現金で持っているだけで、その価値が毎日目減りしているのと同じです。100万円の通帳の数字は変わりませんが、その100万円で買える物の量は確実に減っている。これは事実上の預金への課税です。
では、どうすればいいか。答えはシンプルで分散投資です。
円という一つの通貨に依存するのではなく、外貨や株式、あるいは不動産やゴールドといったその他の資産に振り分けていく必要があります。
投資は怖いという方もいるかもしれませんが、今は円という通貨を現金・預金で持っているだけでも怖い時代となっています。
日本の株価上昇はたしかに急ですが、現在の株価上昇は、80年代後半のバブル期とは異なり、円安やインフレによる企業収益の名目上の増加を反映しています。円の価値が下がれば下がるほど、企業の利益が膨らみ、株価も上がりやすくなる。つまり、日本株を持つことは、ある意味で円安に対するヘッジにもなっているわけです。
もちろん、外貨建資産※1を持つことはさらに強力な防衛策になります。世界で通用する通貨であるドルや、成長性の高い国の資産を持つことで、円というローカル通貨の沈没から逃れることができるのです。




