ゴールドとドルの未来をどう見るか

 資産分散の対象として、最近特に注目されているのが金(ゴールド)です。価格が高騰していて今さら買うのは怖いという声も聞かれますが、金が上がっている背景には、世界の構造的な変化があります。

 一つは、米国に対する不信感です。トランプ政権が保護主義的な姿勢を強める中で、これまでのドル一強の体制に不安を感じる国や個人が増えています。アメリカがいつドル決済をさせないといった強権を発動するか分からない。そうした地政学的なリスクへの備えとして、一部の国の政府、中央銀行や個人がドルから金へと資金をシフトさせていると考えられます。

 では、ドルの覇権は終わるのか。私は、ここ数年はまだドルが強い状況が続くと見ています。しかし、20年、30年といった超長期のスパンで見れば、今の極端な政策を続けているドルの地位が揺らぎ始めていくのも事実でしょう。だからこそ、ドルだけに頼るのではなく、他の通貨や金も含めた、より多層的な分散が必要になってくるのです。

イラスト・城井文平

最良の投資は、常に自分自身

 最後に、最も重要で、かつ最も効率の良い投資についてお話しします。それは、他ならぬ自分自身への投資です。

 資産運用の世界では分散投資や積立投資が王道とされます。一度にドカンと買うのではなく、時間を分散して少しずつ積み立てていく。これは、マーケットの底がどこか分からない以上、非常に理にかなった守りの戦略です。時間を味方につけ、ポートフォリオをじっくり育てていく。若い人なら時間がたっぷりある分、これは非常に強力な武器になります。

 しかし、そうして育てたポートフォリオから得られるリターンよりも、自分が働いて稼ぐ力の向上(リターン)の方が、多くの人の場合、はるかに大きいはずです。

 インフレの時代、物の値段が上がり、通貨の価値が下がる中で、最強の防衛策は自分の稼ぐ力をインフレ以上に高めることです。金融市場は自分のコントロールの及ばないところで動きますが、自分のスキルや知識、経験といった人的資本は、自分の努力次第で磨くことができます。

 日本全体が動き始めた今の時代、これまでの何もしなくても変わらなかった30年の感覚はもう通用しません。資産を円以外の形に分散し、時間を分散してリスクを抑えながら、一方で自分自身の稼ぐ力を最大化していく。

 ポートフォリオは、ある日突然完成するものではありません。時間をかけて試行錯誤しながら、自分に合ったバランスを見つけていくものです。この変化の激しい時代を、不安がるだけでなく、自ら動き、学び、投資することで、新しいチャンスとして捉え直していただきたいと思います。

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※1外貨建資産…ドルやユーロなど、日本円以外の通貨で保有する資産のこと。外国の預金、株式、債券などが該当する。円安になれば資産価値が円換算で増えるメリットがある一方、円高になれば損失が発生するリスク(為替リスク)も伴う。

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