池上 日米関係を壊さないための苦渋の選択だったことは理解できますが、もう少し言い方があったのではないか、とも感じてしまいます。

高市早苗首相 Ⓒ時事通信社

 佐藤 高市首相は不規則発言をしたわけではなく、あくまで情報機関の報告に基づいたうえで、日本ができる最大限の対応をしたと見るべきです。現在の日本のインテリジェンス機関は優秀ですよ。情報の収集と分析を行う内閣情報調査室(内調)と、政策判断を行う国家安全保障局(NSS)の情報分析は非常に正確です。中でも内調を率いる内閣情報官の原和也氏とNSS局長の市川恵一氏のコンビは非常に優秀です。

草食獣か、肉食獣か

 池上 トランプは今回の攻撃に際して「イランの差し迫った脅威を排除し、米国民を守る」という言い方をしました。ただ、昨年6月にアメリカとイスラエルがイランを攻撃した12日間戦争で核施設を爆撃した時は「核施設を完全に破壊した」と宣言していて、国防総省の情報部が「まだ十分に破壊されていない」と評価したとの情報が流出したら責任者をクビにしました。今もイランが核兵器を持っているのならば、自分の発言は嘘だったことになります。

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トランプ大統領 Ⓒ時事通信社

 日米首脳会談でも「なぜ同盟国に攻撃を教えてくれなかったのか」という日本メディアの質問に、真珠湾攻撃を引き合いに「あの時、日本がアメリカに伝えたか?」という趣旨の発言をしました。真珠湾攻撃もそうだろ、と居直るのは、今回のイラン攻撃でも卑怯なことをした自覚があることの裏返しです。数々のめちゃくちゃな発言に話を合わせる高市首相は大変だっただろうな、と思うと同時に、絡めとられる危うさも感じます。

 佐藤 人類学者で、生態学者でもあったグレゴリー・ベイトソンは「キューバ危機とタコの喧嘩の類似性」に関する論文を書いています。すなわち、言葉を信用できなくなった国家間の行動は、動物に近くなるというわけです。

 池上 なるほど(笑)。

池上彰氏 Ⓒ文藝春秋

 佐藤 ですから、現在の国際社会はジャングルに喩えると理解しやすい。いまはまだ、各国がどの動物として生きていくかを選べる局面です。まずは、草食獣を選ぶか、それとも肉食獣を選ぶか。

 池上 トランプは自身を「ライオンキング」に喩えていますね。“獅子王”というより“暴れ”獅子ですが(笑)。

 佐藤 その前提で考えると、イラン攻撃を真っ向から批判したスペインのサンチェス首相や、昨年、首脳会談でトランプと口論したウクライナのゼレンスキー大統領は、自ら草食獣であるシマウマ、あるいはヌーを選んでしまったようなものです。

 池上 捕食されてしまうわけだ。

 佐藤 たとえばロシアはカバ。うっかり縄張りに入るとライオンでもワニでも襲いかかる。草食獣ながら肉食獣顔負けの獰猛さを秘めています(笑)。で、高市首相はどうか。草食獣ではなさそうで、最初はハイエナかなと思ったのですが、獲物を横取りするのでライオンとは敵対する。「これだ!」と思い付いたのがヒョウ。小さい獲物を捕食するのでライオンとも被らない。しかも木登りが得意だから、いざとなればライオンから逃げられる。高市さんは、まさに“女豹”です。

※本記事の全文(約9000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年5月号に掲載されています(池上彰×佐藤優「“暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか」)。

全文では、以下の内容について詳しく語られています。
・高市首相の仲介外交は可能か
・イランは警戒心に欠けていた
・注目すべきはアフガニスタンとパキスタン

文藝春秋

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“暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか

出典元

文藝春秋

【文藝春秋 目次】東京極秘対談 ティール×トッド 世界は終末を迎えているのか/池上彰×佐藤優 “暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか/官邸官僚の第二の人生

2026年5月号

2026年4月10日 発売

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