――一方で、「毒親」という言葉が出てきたり、家族の問題がクローズアップされるようにもなりました。

小田切 昔はそんな言葉がありませんでしたけれど、初めて「毒親」っていうジャンルを知った時はすごく安心しました。ジャンルがあるということはやっぱり私だけじゃないんだと。私にとっては嫌な言葉ではなくて、救いの言葉みたいな感覚ではありますね。

――ご自身の生い立ちが、今の仕事に与えている影響はあると思いますか。

ADVERTISEMENT

小田切 私の継母が、とにかく美容とメイクを徹底する人だったんですね。外面がすごく良い人だったので、家の顔と外の顔を完璧に使い分けるために、鎧をまとうかのようにメイクをしているのを幼少期から間近で見ていたことは、今の仕事に大きく影響していると思います。メイクで仮面を作り、人生をコントロールするというのはすごく大きなスキルだと思うんです。

 ヘア&メイクアップアーティストという仕事をする上では、女優さんがどんなに人生のどん底にいてもハッピーに見せなきゃいけない。どんなにひどい表情をしていようが美しく仕上げなければならない、仮面を作らなきゃいけない。そういうメイクのすごさを教えてくれたのは継母かもしれないですね。

 

「解放されたい気持ちがあった」“毒親育ち”であることを公表した反響

――小田切さんが自身の生い立ちを公表したことで、どんな反響がありましたか。

小田切 最初はYouTubeで、生い立ちについて話した動画の切り抜きがバズったんですよね。それがきっかけで、同じように苦しんでいる若い方やいろいろな方から反応をたくさんいただいたんです。

 その時に思ったのが、私が生い立ちを語ることによって「毒親育ちという境遇なのに成功している人がいるんだったら、私も行けるかも、頑張れるかも」という気持ちになる人もいるんじゃないかと。

――そういう思いで過去のことを発信しているのですね。

小田切 話すことでちょっとマイナスの要素もあるかなとは思っていたんですけれど、自分自身、解放されたいという気持ちがあったんですね。それが結果として誰かの人生の後押しになったのであれば、話してよかったと思っています。

 今は多様性の時代と言っても、それって都市部だけなんですよ。田舎で本当に苦しい思いをしている子どもってたくさんいると思うんです。日本人の9割はまだ「他人と同じことが美徳」という文化や、幸せの形も「こうでなきゃいけない」みたいなフォーマットに縛られているように感じます。

 結婚して、子どもができて、孫の顔が見たくてというのが当たり前で、そこから外れると「外れ者」みたいに思われてしまう。そういう世界に生きていると、何かで成功している人のことを「自分とは違うんだ」と思ってしまうんですね。