昨年の春に放映された月9ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(フジ)では、小泉今日子演じる59歳の主人公が定年後をどう生きるか、セミナーを受けるところから始まっていた。仕事一筋で生きてきたシングルの彼女はこの先どう進んだらいいか悩むが、同じような気持ちを抱える女性は今、少なくないだろう。男女雇用機会均等法が施行され、今年で40年。総合職に就いた女性も、一般職で働いてきた女性も、定年を迎える時期となった。CMなどで花束を抱える男性が帰宅し、妻が「長い間お疲れ様でした」と迎える家父長制的な定年の絵ばかり見せられてきて、女性の定年の絵姿は描けないままだ。
そこで、この『女性たちの定年後――お金・仕事・暮らしのリアル』では、ミドルシニアの女性たちへ「これから」を指南する。とはいえ、女性は結婚・出産等を経て離職経験のある人が多いので、定年も男性ほど慌てないと論を始める。たしかに今、定年を迎える女性たちの中には結婚・育児のために退職し、いざ再就職となった段で元の職場に戻れず、苦労した人も多いだろう。同時に、子どもを持たない選択をしたり、シングルで生きてきた女性もこの40年で急増した。その両者の定年後を、中高年女性の雇用関連の調査研究をする筆者は、年金や健康問題、再就職に必要なことなどデータを使って解説する。すると自ずと見えてくるのは、女性たちが働いてきた環境での男性との格差だ。ここに問題の根っこが見つけられる。
たとえば厚生年金の受給額は、女性は男性に比べて「現役時代に低賃金」で、「結婚・出産などで雇用が途切れている」ことで大幅に低い。そもそも現在の年金政策は「40年間、平均的収入で働き続けたサラリーマンの夫と専業主婦」をモデルにしている。言わせてもらえばその制度、男女雇用機会均等法の施行と同時期に始まったのだから、馬鹿にしている。国は女性の働く機会の均等をうたいながら、男性に扶養される女性像をモデルとし、40年間素知らぬ顔をしてきた。結果的に必死に働いても、女性は「ミドルシニア男性に比べて職務範囲が狭く、キャリア形成が乏しい」とも、筆者は指摘する。
さらに、女性がどう生きて働いてきたのか? 11人の生の声が紹介されている。50代で資格取得や転職するなど意欲的な人が多いのは、キャリア形成に乏しかったからもあろうが、前向きで参考になる。しかし、11人のほとんどに配偶者がいて、主に正規職に就いてきた。前半で「ひとり暮らし女性の貧困リスク」も解説しているが、無配偶のミドルシニア女性には雇用が流動的で低賃金・低年金、住まいも安定せず死ぬまで働くという人も多い。定年後、という概念さえ持てないのだ。女性の定年後は、そこに大きな問題があることを忘れないでほしい。
ぼうみおこ/1978年、福井県生まれ。ニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任。神戸大学大学院国際協力研究科修了。2002年、読売新聞大阪本社入社。17年より現職。
わだしずか/1965年生まれ。ライター。著書に『中高年シングル女性』、『世界のおすもうさん』(共著)他。
