未来への願いが込められた正統派ジュブナイルSF

 このような現実を描いた上で、ウーゴ・ビアンヴニュ監督は、SF作品がしばしばシニカルであることを問題視している。むしろ「可能性を想像し始めることが、物事を改善する唯一の方法かもしれない」というのだ。そして映画はその姿勢の通り展開していく。

 アルコは自分がやってきた2932年の未来の様子をイリスに語る。そこでは家にドームはもう不要で、家族はともに暮らし、自宅の畑でとれたものを食べて暮らしている。そこは自然と科学が調和したひとつの理想郷だ。

©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA

 映画終盤、孤独なイリスは、ロボット・ミッキーから「思い出」をもらう。そしてそれがきっかけとなり、アルコが語った「未来」が本当のことであることを理解し、少し大人になる。その彼女の変化が、より多くの人の幸福な未来へと繋がっていく。

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 少年少女の時空を超えた出会いというシンプルな物語の中に、よりよい未来への願いが込められているのが本作なのだ。

ふじつ・りょうた 1968年静岡県生まれ。アニメ評論家。新聞記者、週刊誌編集を経て、2000年よりアニメ関連の原稿を本格的に書き始める。雑誌、パンフレット、WEBなどで執筆を手掛け、ラジオ・TVにも出演。東京工芸大学芸術学部アニメーション学科で教鞭もとる。主な著書に『富野由悠季論』(筑摩書房)。

INTRODUCTION

本年度アカデミー賞長編アニメーション映画賞にノミネートを果たし、アニー賞、ヨーロッパ映画賞、アヌシークリスタル賞ほか名だたる映画賞を席巻する感動の冒険ファンタジー。ナタリー・ポートマンが製作総指揮を務め、CHANELが協賛に名乗りを上げ、気鋭NEONが配給権を獲得。「この10年で最高のアニメーションの映画の一つ」などと絶賛されている。近未来を舞台にどこか懐かしく温かい物語を、鮮やかな色彩のアニメーションで表現したのは、本作が長編アニメーションデビューとなるウーゴ・ビアンヴニュ。

 

STORY

気候変動により荒廃が進んだ2075年の地球。10歳の少女イリスは、ある日、空から虹色の光を放ちながら落ちてくる謎の物体を目撃する。それは、タイムトラベルが可能になった遥か未来(西暦2932年)から不時着した少年、アルコだった。 未来へ帰る手段を失ったアルコと、閉塞感のある現代を生きるイリス。二人はアルコの「虹色のスーツ」に隠された謎を解き、未来への帰還ルート=“虹の道”を探す旅に出る。

 

STAFF & CAST

監督・脚本:ウーゴ・ビアンヴニュ/製作:フェリックス・ド・ジブリー、ソフィー・マス、ナタリー・ポートマン/アニメーション監督:アダム・シラード/編集:ナタン・ジャカード 音楽:アルノー・トゥロン/2025年/フランス/88分/配給:AMGエンタテインメント ハーク/©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA

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