東証一部への上場から、1年後の暗転
この頃、私は焦っていました。05年までの1年間、我々は上場審査のため、新しく大きなチャレンジをすることができずにいたからです。しかし世の中はIT革命のまっただ中。私と同じような志を持ったIT系企業の経営者たちが次々に大きな挑戦をし、成功を収めていました。彼らの躍進を、私はただ羨ましく見ているしかなかったのです。
そこで、05年6月に東証一部に上場するや、抑えていた情熱を一気に新規事業へと向けました。まず目をつけたのが金融事業です。さらなる拡大のため、ローン・クレジット事業に進出し、消費者金融会社のオリエント信販を270億円で買収しました。
耳を疑う話が飛び込んできたのは、その約1年後のことでした。当時、利息制限法の上限金利を上回る「グレーゾーン金利」について、最高裁が違法との判決を下し、業者は過払い金請求に備えて引当金を積まなければいけなくなっていました。ここまでは買収時から想定していたのですが、驚いたのは引き当ての期間です。日本公認会計士協会の会計基準改定により、我々は買収してから1年しか経っていないにもかかわらず、過去10年分も遡って引当金を計上するよう迫られたのです。引当金等の金額は300億円にのぼり、自己資本比率は買収前の49.6%から0.5%にまで急落しました。債務超過に陥れば、いずれ上場は廃止。コベナンツ(財務制限条項)にも抵触するため、いつ金融機関から借り入れ金の返済を求められてもおかしくない状況になってしまいます。まさに、黒字倒産の危機でした。
※約1700字の全文では、自分の身に訪れた「人生最大の危機」を熊谷氏がどのように乗り越えたのかが詳細に語られています。全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と「文藝春秋」2026年5月号に掲載されています(熊谷正寿「資金繰りのため全私財を売却」)。
出典元
【文藝春秋 目次】東京極秘対談 ティール×トッド 世界は終末を迎えているのか/池上彰×佐藤優 “暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか/官邸官僚の第二の人生
2026年5月号
2026年4月10日 発売
1300円(税込)
