こうした良さは、たわしの元祖「亀の子束子」特有のものなのか。多種多様のたわしがあるなかで、何か違いはあるのだろうか。

検品も必ず「人間の目と手」で

「亀の子束子は484円です。安価に買えるスポンジやたわしがいろいろとあるなかで、当社のたわしを選んでくださるお客様がいらっしゃる。『亀の子は使いやすい』『毛がへたりにくい』という声をよくいただきます。使い心地や毛質の良さは、品質維持を徹底しているからだと思います」

亀の子束子の良さは、たわし職人の技術によるところもあるが、もう一つ同社が注力しているのが人の手による検品だという。

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職人の手で仕上がったたわしはすべて、国内で検品が行われる。本社に併設する滝野川工場と和歌山工場で、ベテランの職人が検品を担当する。

検品職人はたわし全体を手で触りながら、余分な繊維を床屋並みの巧みなハサミさばきで刈り込む。同時に、繊維の一部欠け、繊維密度の不均一、留め金の微妙な曲がりなど、最低20項目を目視や手先で確認する。

「不良品」を見分けるベテラン職人

ここまで検品項目が多いのは、たわし製造業者のなかでも稀だという。傍目では不良品に見えないたわしが、検品職人の目にかかると、即弾かれる。

勤務歴30年の工場長・関谷薫さんは、「繊維の密度が揃っていない、繊維の毛並みが短い、竹が混ざっているなど、手で触れる前に目視ですぐにわかります」と話す。1日に約1000個のたわしの出来をまるで機械を通したかのように、正確に的確に確認していく。

明治時代から伝わるたわしの使いやすさや握りやすさは、現場の人の手を介して生まれていた。

使うとわかる、老舗ブランドの理由

筆者は毎日のように亀の子束子を使っている。鉄のフライパンや中華鍋の油汚れや焦げをたわしでごしごしと力を込めて落としても、毛が潰れず、4~5カ月は持つ。手になじんで握りやすいため、洗い物がしやすい。

実は、過去に2、3度、別のメーカーのたわしを買ったことがあった。たわしならどれも機能は同じと、高をくくっていた。中華鍋やまな板洗いに使ってみてわかったのは、毛のへたり具合が違うことだ。たわしの先端の毛先がすぐにへたり、全体的に毛並みが片方に寄ってすき間ができて、焦げや汚れが落ちなくなった。結局、そのたびに数カ月で、亀の子に戻った。