亀の子束子のうたい文句にある「使い込むほど、他店の3倍は持つ」は、大げさではなかった。しっかりと立った毛、丈夫さ、握りやすさ。そういう変わらない品質への安心感が、119年続くブランドたる理由なのだと、工場を見学して改めて思った。
「職人がいない」一大危機に直面
「昔はすべての商品を国内の職人が作っていたのですが、国内でシュロが入手できなくなったこともあり、ヤシの産地であるスリランカの工場で、現地の職人さんにも任せるようになりました。さらに、一時期、職人の高齢化による退職で国内工場から職人がいなくなるという状況に直面したこともあったのです」
119年続く家業を襲った危機は、かつてシュロの一大生産地として、たわし作りの伝統が息づく和歌山の職人の手を借り、乗り越えたという。
今では、30、40代の若手も育ち、亀の子独自の製法は彼らに受け継がれている。
たわし作りの伝統を守り続けている同社は、次の100年を見据えた事業に取り組み始めていた。たわし1本立てから商品の多角化へ向けた挑戦だ。
亀の子スポンジを新たな看板商品に
2014年、スポンジ市場へ参入する。
「当社のたわしにスポンジを足せば、食器洗いが同社の商品で完結できます。また、キッチンのシンクに、必要なものを当社の商品ですべて揃えてもらうという目標がありました」
他社と差別化を図るため、ピンクやグリーンといったカラフルな限定色を打ち出し、商品のブランディングに注力した。また、研究所を設け、スポンジの性能を研究し、抗菌力や防カビ力といった成分を加えて商品を常にアップデートしているという。
食器用スポンジという「レッドオーシャン」に乗り込むという大胆な挑戦だったが、「亀の子スポンジ」は2017年、日本パッケージデザイン大賞を受賞した。
「たわし屋」を守り続けるために
その1年後、サイザルという新素材で作ったベーグル型の「白いたわし」シリーズを発売。ボディケア商品の展開も開始し、これまで届かなかった若い主婦層、20~30代の女性層を獲得していく。その結果、同社の売上構成比が大きく変わった。以前は、定番のたわしが売上の97%を占めていたが、今ではたわしが約75%で、他商品の比率が上がっている。