「むしゃむしゃ食べてみたらどうか」の真意は
―― 「NHK夏休み子ども科学電話相談」で「セミをなめたら味がしなかった」という質問で、先生が「むしゃむしゃ食べてみたらどうか」と提案されたのがSNSで話題になっていました。もともと昆虫食に興味がおありなんですか?
久留飛 管理された中で育てて食べるのなら、昆虫食もいいとは思いますけどね。ただ、漁業などで養殖をしてへん魚を捕ると資源として減ってしまうのと一緒で、「セミがぎょうさん居るから、それを捕って唐揚げにして食べる」という単純な発想は賛成できないけど。
でも、興味を持つというのはとても大事なので、「食べたらこんな味がしたよ。すごいな、この昆虫」と思うんやったらいくらでも食べたらええと思う。興味はどこから持ってもいいと思うねん。チョウのかたちがかわいいと思ったり、カブトムシの角がかっこいいと思えば、それから入ってもいいし。
子どもたちのストレートな質問を突き詰めると……
――「NHK夏休み子ども科学電話相談」で「昆虫」の先生を務めて、感じることを教えてください。
久留飛 昆虫についての質問は、子ども本来の「なんで?」というストレートな疑問が多いように思います。
比べるわけやないけど、動物や天文は、知識があった上で「なぜそうなんですか?」という質問が多い。一方で、昆虫については「セミが生きてるか死んでるかどうしたらわかりますか?」みたいな質問が寄せられる。「いやー、動いてたら生きてるよな」としかいいようがない。でも、そういう質問がおもしろいんです。
―― 直球な質問こそがおもしろい。
久留飛 子どもたちはストレートに、それは生きてるか死んでるか、なんでそんなことしてんねん、っていう、ほんまの興味があって質問してるんだと思うんですよね。僕は逆に、「なんであなたはそう思ったの?」「なんでそんなことに興味を持ったの?」っていつも思うわけです。
突き詰めていくと、その先には「なんであんたは質問するあなたなの?」「質問する私は何者なの?」というところまで、人間の好奇心ってあるように思うのね。結局自分って何を求めているんやろうっていう。そんなところの原点みたいなものが、子どもの質問にはあるんやろうなと思うわ。
いろいろなことをやってみれば、好きなことができるかもしれない
―― そんな子どもたちに一言メッセージを送るとすれば、どんなことですか?
久留飛 とにかく自分でいろんなことをやってみることやなと思います。いろんなことをやってみて、ひょっとしたら好きなことができるかもしれんやん。やっぱりこれが大人になっても、生きていくときに一番大事なんです。
一緒に出演している恐竜の先生、小林快次先生も言ってはったけど、「三日坊主でええねん」ってね。「たまたま僕は20年してるけど」って、おっしゃってたと思うねんけど、何かをやってみたら好きかもしれんし、興味が出るかもしれんわけで。
――大人にはどんなメッセージを送りたいですか?
久留飛 特に親御さんに対してやけど、セミ捕りとか、昔だったら子どもの遊びだったものが、今は「家族の趣味」に格上げされている感じがしますね。親がカブトムシを飼うのを手伝っていたりとか。何となく親が先導して「こういう大人になってほしい」というのも分かるけど。
好きなことを見つける、興味を見つける、「自分はこう思う」ということを恐れずに、「僕は他の人と違っててええねん」というぐらいの気持ちを持つことが、子どもにとってとても大事やと思う。子どものそうした気持ちを、親御さんには尊重してほしいですね。