地上は機動隊と反対派がもみ合い、まるで「市街戦」のような混乱に

 成田空港の管制室では襲撃部隊による破壊が続いた。部隊のメンバーの1人、中川憲一は大量のバインダーに閉じられていた管制関係の書類を割れた窓から外にばらまいた。書類は風に乗り、飛んだ。テレビニュースに映し出されたその光景は活動家がビラをまいているように見えた。

 当時受験生だった劇作家の鴻上尚史は岡山駅の待合室でニュースをみた。早稲田大学の受験のために新幹線で上京する途中だった。「すごいことになっているな」。鴻上は衝撃を受け、後に、小説「ヘルメットをかぶった君に会いたい」(集英社)を執筆する。

開港日の朝、総決起集会を開いた反対同盟(書籍より、以下同)

 書類は、反対派と衝突していた元機動隊員中村勇の頭上にも舞い降りてきた。中村は伝令を受け、空港の南側約1.5キロに位置し、反対派が立てこもっていた「横堀要塞」から急きょ、管制塔方面へ転戦。「ラッセル車」と呼ばれた、反対派の武装トラックを退却させたばかりだった。

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 反対派から喚声があがり、周囲が騒がしくなった。「何だ何だ」と思って見上げると、「ヘルメットをかぶった連中が上で赤い旗を振ってビラをばらまいていた」。中村は「あー。やられた」と思った。

 管制室からは空港の各ゲートで機動隊ともみ合う集団や火炎瓶の煙が見渡せた。反対派の奮闘に、行動隊長の前田道彦も「連中もやってるぞ、やってるぞ」と思った。中川は「のどがカラカラで置いてあったヤカンの水をがぶ飲みした」。前田らは機械を壊し続けたが、1台のテレビは破壊を免れた。画面は、管制塔占拠の臨時ニュースに切り替わっていた。

 屋上にいた管制官たちも、「まるで市街戦のような」(元管制官)地上の光景を見守っていた。そこへ報道のヘリコプターが近づいてきた。管制官の1人が「私たちは管制官です」と、ポケットから取り出した紙切れに書いて見せた。

 管制官の1人が、警察などに状況を知らせるためヘリに飛び乗った。その直後、ヘリのバランスが崩れた。元管制官は「ローターが頭上すれすれを通ったように思った」。しばらくして警察による救助が始まった。先輩がヘリでつり上げられた時、「ブランコのように大きく揺れて、遠くにある公団ビルの方に吸い込まれるように見えた」。元管制官の救出順は最後だった。全員が助け出されたのは午後3時過ぎだった。