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4万人以上医師が増えたのに、なぜ過重労働がなくならないのか

 医師不足が叫ばれるようになった結果、08年頃から医師を増やすために医学部の定員枠が拡大されるようになりました。07年まで7625人に抑えられていた定員は、18年には9419人になりました。06年に27万7927人だった医師数も毎年3%前後で増え続け、16年には31万9480人となりました。

 しかし、医師不足が叫ばれ始めて10年以上経ち、4万人以上も医師が増えたにもかかわらず、勤務医の過重労働はあいかわらず解決されていません。それは何故でしょうか。

「医師不足」なのに、世界一病院数が多い

 私は、勤務医の過重労働の根本的な原因の一つに、日本の病院数および病床数が多すぎることがあると考えています。

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 実は、日本の医療機関数は欧米諸国に比べて、圧倒的に多いのです。2014年の日本の医療機関数は、先進国で断トツ1位の8442施設です。フランス(2593施設)、ドイツ(1984施設)、英国(1595施設)はもとより、先進国2位で、人口が日本の3倍近くある米国でさえ、5710施設しかありません(Espicom「World Medical Markets Fact Book 2014」経済産業省平成28年度医療技術・サービス拠点化促進事業資料「重点国の基礎データ比較」より)。

 病床数で見ても同じです。人口1000人あたりの総病床数を見ると、先進国2位のフランスが6.3、ドイツが6.0、英国が2.9、米国に至っては2.8しかないのに、圧倒的1位の日本は、米国の4倍以上になる12.3もあるのです。

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 一方で、日本の医師数は諸外国に比べると多くはありません。人口1000人当たりの医師数は、OECDではオーストリアがトップの5.1人、ドイツが4.1人、フランスが3.1人、英国が2.8人に対して、日本は2.4人となっています(「OECD Health Statistics 2016」厚生労働省「医師の需給に関する基礎資料」平成29年6月)。

 決して多くない医師たちが世界でもっとも多い医療機関に分散し、世界でもっとも多い病床、すなわち入院患者を診ていることがわかります。人手が分散して仕事が大変になるのは、当然のことではないでしょうか。