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医療圏ごとに定員を定めるべきと指摘する医師も

 また、欧米では管理しているのは病院の数だけではありません。前著の南医師によると、ドイツではすべての専門科の医師数に定員があり、心臓外科は全国で約1000人と決められているそうです。

 医師でタレントの西川史子さんは、女性医師が増えると「眼科医、皮膚科医だらけになっちゃう」とテレビ番組で発言して物議をかもしていましたが、実は今回、医師の過重労働を軽減するためにどうすべきか、医師の方々に意見を求めたところ、「医師の診療科間の偏在をなくすためにも、欧米と同じように各診療科の専門医の数を制限すべきだ」という声が多数聞かれました。

西川史子さんの発言が物議をかもした ©時事通信社

 ある私立大学病院の教授(50代・男性)は、次のように話してくれました。

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「たとえば、各診療科で専門医が何人必要かを算出して、医療圏ごとに定員を定めるべきです。仮に皮膚科医として働きたければ、東京はもう定員いっぱいだけど東北ならまだ定員に空きがあるという具合です。そのようにして、地方や診療科で専門医の偏在がないように、コントロールすべきだと思います」

 なにより、専門的な治療ができる施設を集約化すれば、1施設にたくさんの専門医を集めることができるので、医師の仕事の負担を軽減することができ、妊娠中や産後の女性医師でも働きやすい職場になるのではないでしょうか。

病床数で平均寿命は変わらない

 病院や病床数が減って、専門医の数も限られると、近くで高度な医療が受けられなくなり、不安に感じる人が増えるかもしれません。しかし、人口当たりの病床数がもっとも多い高知県と、もっとも少ない神奈川県とではその数に3倍もの差がありますが、病床数が多くても少なくても、男女の平均寿命にはほとんど差はありません。

 その一方で、病床数が多い県ほど入院医療費が高くなり、最高額と最低額の県で2倍もの差がついています。病院数や病床数が多くなると、その分、病院は経営的な理由から外来患者や入院患者を増やさなくてはならなくなり、医療費もたくさん使うことになってしまうのです(森田洋之『医療経済の嘘』ポプラ新書)。

 病院や病床数を減らした分は、多くの日常的な病気に対応できる総合診療のかかりつけ医や、在宅医療に対応してくれる診療所を増やすなどの対策も必要でしょう。いずれにせよ、日本の国民医療費はどんどん膨らみ、いまや40兆円を超えています。このままでは、医療財政はいずれ破たんすると心配されています。

 医療における女性差別をなくし、男女とも働きやすい職場にするためにどうすべきか。何より持続可能な医療を実現するために、日本の医療体制をどうしていくべきなのか、東京医大の事件を機にあらためて議論を盛り上げていくべきではないでしょうか。