「ない、ない、私の親指がない!」
バレエ教室の講師・木村里美さん(仮名・当時24歳)が、元レッスン生の男に右手の親指を付け根から切断された。
11時間に及ぶ手術で接合には成功したものの、自分の意思で指を曲げることはできなくなった。幼少期から20年以上打ち込んできたバレエと、全国大会で最優秀賞を取るほどの腕前を誇ったピアノ――その両方が、一瞬にして奪われた。
平成28年、東京で起きた事件のダイジェストをお届けする。なおプライバシー保護の観点から本稿の登場人物はすべて仮名である。
犯人の高橋敏弘(当時41歳)は、かつて里美さんが担当するバレエ発表会の演目にレッスン生として参加していた。
補講の連絡が届かなかったこと、発表会DVDのインタビュー撮影に呼ばれなかったこと、そして指導中に「58歳の私の父でも教えればすぐにできる」と言われたことなどを「侮辱だ」と受け取り、恨みを募らせていった。
「侮辱されたんだから、当然の仕返しだ」
高橋は整体師の仕事を辞め、自宅を引き払い、退路を断った上で犯行に及んだ。金づちとたがねを持参し、意識を失った里美さんの親指を切断。自ら110番通報しながらも「侮辱されたんだから、当然の仕返しだ」と居直った。
公判で動機を問われた高橋は、「実行すれば間違いなく刑務所に行くとは思ったが、泣き寝入りするのは違うと思った」と述べた。
そして留置中に周囲から「やり過ぎだ」と指摘されて初めて、「自分の感覚が世間一般からズレているのかな」と感じたという。
一方、法廷で証言台に立った里美さんは、こう語った。
「被告人の思い込みで崩れ去ってしまった。自分がした罪の重さを認識してほしい」
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「親指がない!」ーーバレエ講師を襲った悲劇はこれだけで終わらなかった。事件の詳細は、以下のリンクからお読みいただけます。
