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安倍「薩長イズム」vs.石破「正直、公正」 珍発言で追う総裁選のゆくえ

なぜ安倍首相は「公開討論」を避けるのか

2018/09/01
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石破茂 自民党・元幹事長
「(「正直、公正」というスローガンについて)これを取り下げるならば、自分は自分でなくなる。それは絶対にしない」

共同通信 8月30日

©JMPA

 8月10日に出馬表明していた自民党の石破茂元幹事長。この1週間、石破氏がスローガンとして掲げていた「正直、公正」は揺れに揺れた。

「正直、公正」というスローガンは、森友・加計学園問題など相次ぐ政権不祥事に批判が高まったことを踏まえたもの。信頼回復に向けて「国民本位の政治・行政改革」の断行を公約していた。12日のテレビ番組では「政府は正直にものを言っているか、証拠を書き換えたりしていないか、すべての人に公正か、はっきり言えば、えこひいきがないかということだ」と説明した(朝日新聞デジタル 8月22日)。

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 しかし、石破氏支持を表明していた自民党の吉田博美参院幹事長が「あえて個人攻撃のようなことはない形で(総裁選に臨んでほしい)と申し上げたい」と不快感を表明(毎日新聞web版 8月28日)。「正直、公正」というスローガンが安倍首相への個人攻撃になるのかと国民がざわついた。

一度“封印”の危機に陥ったものの……

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 吉田氏の発言以前から党内からの批判の声は強く、石破氏は25日の段階で「人を批判するつもりはないが、そう捉える方もあるなら、変えることはある」とスローガンの封印を示唆した(朝日新聞デジタル 8月25日)。

 結局、29日に石破氏は「正直、公正」というスローガンを「取り下げない」と断言。党内で安倍首相への批判だと指摘があることについては「当たり前のことがどうしてそうなるのか」と反論した(日本経済新聞電子版 8月29日)。一方、30日に石破氏と会談した吉田氏は、あらためて安倍首相への個人攻撃と取られかねない言動を慎むことを求めたという(共同通信 8月30日)。

「どんなに批判されても言うべきことをきちんと言った政治家がこの国にはいた。一歩でも近づきたい」(産経ニュース 7月29日)。「反軍演説」で知られる元衆院議員・斎藤隆夫の記念館を訪問した際に、石破氏が語った言葉だ。今後の総裁選でどのような言葉を聞くことができるだろうか。