〈あらすじ〉
ある夜、ワヒド(ワヒド・モバシェリ)が勤める工房に、近くで事故に遭ったという男(エブラヒム・アジジ)が車の修理にやってくる。男が義足を引きずる音を聞いたワヒドは、その男がかつて刑務所で自分を酷い目に遭わせた看守エグバルだと気付く。我を忘れたワヒドは、男を拉致し、砂漠に生き埋めにしようとするが、男は「人違いだ!」と主張。身分証も別名だった。実はエグバルの顔を見たことがなかったワヒドは、男を車の荷台に押し込んで街に戻る。
誰か“この男はエグバルだ”と断言できる者はいないのか――。やがて、ワヒドと同様に不当に投獄された経験を持つシヴァ(マルヤム・アフシャリ)、結婚式を明日に控えたゴリ(ハディス・パクバテン)、その新郎アリ(マジッド・パナヒ)、ハミド(モハマッド・アリ・エリヤスメール)が揃う。復讐のためにも男に自白させ正体を暴こうとするが、事態は思わぬ展開に……。
〈見どころ〉
報復殺人のスリルや国家権力への抵抗など、重いテーマの中にまじるユーモアと人間味。
偶然再会した看守を復讐のために拉致。でも人違いかもしれなくて!?
イラン政府から弾圧を受けながらも映画を作り続けてきた巨匠ジャファル・パナヒ監督の最新作。自らの2度の投獄経験と、同じような境遇の人々の声から着想した社会派サスペンス。第78回カンヌ国際映画祭のパルムドール(最高賞)受賞作。本年度のアカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされた。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★★★苛烈な実体験と入念な話法が溶け合い、「恐ろしいのに思わず笑い出す」不条理劇が屹立する。単なる復讐譚の域を超えて自身も墓穴を掘り進んでいく構造は、スリリングな白昼夢のようだ。根の深い怒りが映画全篇に脈打つ。
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斎藤綾子(作家)
★★★★☆パナヒ監督の正義が、苦悩と迷いの中で辛辣に放たれる。死刑囚のように首に縄をかけられ三時間も台の上に立たされる拷問や処女のまま処刑すると天国に行くから犯す拷問は実話か。偶然の再会を貴方だったら放置できるか。
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森直人(映画評論家)
★★★★☆復讐の暴走が予期せぬ方向へ転がる過程に、『間違えられた男』や『ハリーの災難』を連想させるヒッチコック的ユーモアが染み出す。笑いと不条理が交錯し、抑圧の記憶の苦さが鮮烈に残る。パナヒの鋭さと遊び心が同時に炸裂。
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洞口依子(女優)
★★★★☆時間と記憶と空間を巧みに駆使し禁令下の身のパナヒ監督しか作れない視点が鋭く冒頭から誘われた。一方でヒッチコックを想起させる仕掛けも楽しむ。人間性を剥ぎ取られた時いかに人間性を保てるのか。その謎の鍵を見つけよ。
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ゲスト評者
竹田ダニエル(ジャーナリスト・研究者)★★★★☆残虐さとトラウマ、復讐が緊迫感たっぷりに描かれ、演技も秀逸。イランの政治情勢が人々に植え付けた傷を知る上で重要だが、結末は解釈の余地ありと考えることもできるが、やや物足りなさもある。
たけだだにえる/1997年生まれ、アメリカ出身・在住。「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに執筆、研究。2023年「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」を受賞。著書に『世界と私のAtoZ』、『アメリカの未解決問題』(共著)など。
- 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
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- 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
- うーん……。★☆☆☆☆
©LesFilmsPelleas 配給:セテラ・インターナショナル
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『シンプル・アクシデント/偶然』
5月8日(金)~
監督・脚本:ジャファル・パナヒ
2025年/仏・イラン・ルクセンブルグ/英題:IT WAS JUST AN ACCIDENT/103分
https://simpleaccident.com/




