〈あらすじ〉
2016年、イギリス北東部。炭鉱閉鎖後すっかりさびれてしまったとある町で、唯一、人々が安心して集える場所――それがTJ・バランタイン(デイヴ・ターナー)が営むパブ「オールド・オーク」だった。とは言え、かつての賑わいはなく、また町が中東からの難民を受け入れ始めて以来、常連客の話題はもっぱら外国人批判だ。そんな中、家族でシリアから逃れてきたヤラ(エブラ・マリ)が、壊れたカメラを携えて店にやってくる。実はローラ(クレア・ロッジャーソン)とともに難民たちの生活支援活動をしているTJは、やがてヤラとも深い友情で結ばれていく。
ある日のこと。今は使っていない店奥の広い部屋を「市民集会のために使わせてくれ」との常連客の依頼を、TJは設備不良を理由に断った。すると今度はヤラたちが、「生活が苦しい人たちに食事を提供する場として、そこを貸してほしい」と言ってきて……。
〈見どころ〉
多くの名作を生み出してきたローチ監督と脚本家ポール・ラヴァティとのゴールデンタッグ!
元炭鉱夫のパブ店主とシリア難民。思いがけない友情が生まれる――
『麦の穂をゆらす風』(06)、『わたしは、ダニエル・ブレイク』(16)でカンヌ国際映画祭のパルムドールを2度受賞している、イギリスきっての社会派監督ケン・ローチの最新作にして、「イギリス北東部3部作」の最終章。難民受け入れで揺れる、炭鉱町の人々を描く。
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芝山幹郎(翻訳家)
★★★★☆対立や摩擦に図式を持ち込みがちな監督だが、この映画は単純な味ではない。異なる貧しさが有機的に絡み合い、主演の男優と女優がでしゃばらない芝居を心がけたためか。英国がEU離脱を決めた年という背景の設定も効果的だ。
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斎藤綾子(作家)
★★★★☆外も内もボロボロのパブが、枯れそうな大木のようにいい味を出している。馴染みの空間が余所者に占領される苛立ちと、壁に飾られた過去の写真に喪失感が浮かぶ。どこにでもありそうな光景と新たな出会いに慈しみを感じた。
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森直人(映画評論家)
★★★★★舞台は2016年の英国だが、今の日本とも重なる。戦火を逃れた難民と同時に、地元民の不満にも耳を傾ける。抑圧された者同士の皮肉な分断という状況を丸ごと受け止め、折れそうな理想を真っ直ぐ打ち出す。これぞローチだ。
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洞口依子(女優)
★★★★★労働者階級が直面する社会的・経済的不正義に対する姿勢を描いてきたローチ監督。今回は失業した炭鉱労働者と難民が出会うあの酒場で自分たちにとっての「私たち」という絆の大きさに観ている側も気付く。俳優が皆いい。
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ゲスト評者
竹田ダニエル(ジャーナリスト・研究者)★★★★☆移民と地元住民の関係は予定調和に寄るタイミングも多く、冗長さも残るが、分断の時代における「共にいること」の意味を手放さずに描いた点は重い。今の日本社会に通じるテーマを投げかける意味でも重要。
たけだだにえる/1997年生まれ、アメリカ出身・在住。「カルチャー×アイデンティティ×社会」をテーマに執筆、研究。2023年「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」を受賞。著書に『世界と私のAtoZ』、『アメリカの未解決問題』(共著)など。
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©Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2023 配給:ファインフィルムズ
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『オールド・オーク』
4月24日(金)~
監督:ケン・ローチ 脚本:ポール・ラヴァティ
2023年/英・仏・ベルギー/原題:The Old Oak/113分
https://oldoak-movie.com




