「将来、WBCやサッカーのワールドカップのような大型スポーツイベントを独占配信するのかどうか、よく訊かれます」
国内配信サービスでNetflixに次ぐ2位につけるU-NEXTを率いる宇野康秀氏(U-NEXT HOLDINGS代表取締役社長CEO)は、そう言って口元に笑みを浮かべる。
「配信サービスのみで完結する形態は、今のところ考えていません」
「結論から言うと、テレビ局や他のサービスとの共同調達や、連携したうえで配信する可能性はありますが、良いか悪いかは別として、大規模な資金を投じて、配信サービスのみで完結するような形態は、今のところ考えていません」
ライバルであるNetflixは今春、これまで地上波放送が当たり前だったWBCを独占配信して、賛否両論はあったものの、大きな話題を呼んだ。追いかけるU-NEXTが今後、同様の「独占配信」で対抗していく方針を示したとしてもおかしくはないが、宇野氏はきっぱりと言い切った。
「WBCのようなイベントは、国民的な関心が極めて高い、いわば『大衆娯楽』です。公共性の高いコンテンツは、年齢も地域も関係なく観られることで、大きく育っていきます。私たちのような配信プラットフォーマーは、ライブ配信はしつつ、特典映像や見逃し配信のような、コンテンツを補完する役割を担うのがよいのではないでしょうか。つまり、誰かひとりがコンテンツを独占するのではなくて、補完し合う。これが本来の配信プラットフォームの考え方です。結果的に収益機会が増えることで、コンテンツの力はむしろ強まっていく、というのが私の考えです」
コンテンツに触れる機会を増やし補完し合う「ウインドウ戦略」
もともと、U-NEXTが採る戦略は「百貨店戦略」と表現され、一つのプラットフォームに映画やドラマ、ライブやスポーツ、雑誌や漫画などあらゆるジャンルのデジタルコンテンツを充実させることに重きを置いている。これが、オリジナル作品が充実するNetflixとの大きな違いである。ここでも、宇野氏は「補完」を強調する。
「映画を例にとって説明すると、映画館で公開された作品は、公開中に観られなくても、多少タイミングは遅れますが、U-NEXTで観ることができます。この『ウインドウ戦略』は単純なようで、とても大切です。一つのコンテンツに触れる機会を増やし、補完し合うことで、コンテンツは強さを増していくのです」
5月9日発売の「文藝春秋」6月号、および「文藝春秋」の電子版「文藝春秋PLUS」掲載の宇野康秀氏インタビュー「大型スポーツイベントの独占はしない」では、宇野氏が見据えるU-NEXTの今後の成長戦略のほか、一度はほとんどの事業を手放すまで追い込まれた波乱万丈の経営者人生を振り返っている。


