最初に申し上げておきたいのはこのコラムは今、読まなくて構わないことだ。9月6日未明に発生した「北海道胆振(いぶり)東部地震」は最大震度7を観測、各地に多大な被害をもたらした。北海道全域約295万戸が停電、完全復旧には1週間を要すると言われている。本稿執筆の7日になって、電力が戻った地域もあるが、例えば道央の札幌ですらいまだ信号機が点かない場所がある。ネットの野球コラムなんて読んでる場合じゃない。HITも押さないでいい。対戦に負けたっていっこうに構わない。北海道の読者は電気を大切にしてください。
今週は札幌市在住の斉藤こずゑさんのコラム担当週だった。しっかり準備する人だから、材料の下ごしらえをして、あとは料理するだけという段階だったと思う。自宅で大きな揺れに襲われたが、幸いケガひとつなかった。ただ停電だ。未明のことだから真っ暗だ。朝になってやっと、家のなかがごちゃごちゃになってるのに気づいたという。
僕は旅先だった。普段そんなことはないのだが、午前3時台になぜか目が覚めた。で、何となくスマホを覗いて北海道の大地震を知る。はね起きた。北海道には知り合いが多い。震源から苫小牧が近いと思った。苫小牧にはアイスホッケー関係の知己が大勢いる。何しろ僕は2006年日本シリーズのとき、札幌のホテルがいっぱいで、苫小牧の王子製紙アイスホッケー部の選手アパートに泊めてもらったくらいだ。時間が時間だったけど、親しい知人にはLINEを送った。心配で眠れない。そのときまさか全道で停電してるなんて思いもしなかった。
斉藤こずゑさんとは翌朝、やっと連絡が取れた。停電でWi-Fiも使えず、またHBCラジオが特番体制を組むかもしれない(斉藤さんは人気アナである)ということで、文春野球コラム・村瀬秀信コミッショナーとも相談して、特例として締切を一日延ばしてもらい、僕が代打に立つことになる。ただなかなか野球コラム執筆にエンジンがかからない。テレビが報じる厚真町の土砂崩れや、札幌市清田区の液状化現象を呆然と眺めていた。誰もが思うことだが、もし冬だったらと思うとゾッとする。といって「不幸中の幸い」って言い方はしたくない。犠牲になられた方がいる。安否不明の方も大勢いる。
この状況で野球はできるのだろうか
ファイターズは4、5日の西武2連戦(旭川スタルヒン、台風21号の影響が心配された)を1勝1敗で終え、首位まで5ゲーム差、何とか希望の灯をつないだ状況だった。5日の試合後、バスでいったん札幌へ移動し、合宿所や自宅に一泊し、翌6日は仙台へ空路移動するはずだった。だからチームは札幌で被災した形だ。「すごく揺れました。地震が起きたときはみんな部屋から出てきた」(浦野博司投手)等、生々しいコメントが報じられている。
6日午後、球団HPに「監督、コーチ、選手、球団職員、スタッフ全員の無事が確認できましたことを報告申し上げます」と告知が出る。ひと安心したが、今度はライオンズが心配になった。文化放送の高橋将市アナに問い合わせてみる。ありがたいことに埼玉西武ライオンズは旭川空港便で無事発っていた。何と6日は新千歳空港が閉鎖された一方で、旭川便は(遅れ程度で)飛んでいたのだ。トンキンがポンスカ打たれたけど、北海道のことで迷惑かけられないからなぁ。ホッとした。
7日の楽天戦(楽天生命パーク)は早々と中止が決まった。移動日に当てられた6日の時点で交通手段がなかった。代替試合は10日に組まれたが、さて、その先の見通しとなると本当にどうなるかわからない。7日、札幌ドームで開催予定だったサッカー日本代表の親善試合(チリ戦)は中止になった。施設内の安全点検はこれから行われるらしい。仮に札幌ドームの安全が確認され、市内の電力が復旧し、地下鉄、JR線、バスの交通網が回復したとして、11日から予定されているホームゲーム(ロッテ戦)が開催可能だろうか。北海道全域を考えるとまだ停電している地域があるかもしれない。節電が呼びかけられるなか、煌々(こうこう)と照明を点けて野球をやることに理解が得られるのか(札幌ドームが自家発電設備を備えてるとしても)。またそもそも皆、野球を見たいという気持ちになるだろうか。